大学入学共通テストは志願者が減少。難関校志願者が増える一方で、難関校以外の志願者では一般入試を敬遠し推薦選抜入試利用に流れる二極化が進んでいます。この傾向は2023年度も続くのか。また現高校1年生は新課程対応の2025年度入試も気になります。駿台予備学校進学情報事業部の石原賢一部長にお話をうかがいました。
1.大学入学共通テスト、志願者減と難易度アップの要因
4年連続で志願者が減少した大学入学共通テスト
駿台は2022年7月に、2022年度大学入試の分析結果をまとめました。2022年度の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の出願者総数は53万367人。2021年度比4878人の減少で、4年連続の減少となりました。しかし、受験者数は48万8384人で2021年度に比べ4270人(0.9%)増加し、受験率も92.08%と2021年度から1.63ポイントアップ。受験者数は回復傾向が見られました。
ただ、共通テストを受験する人は今後減っていくと見ています。中堅レベル以下の、いわゆるボリュームゾーン以下の大学を志望する受験生にとって、共通テストの出題傾向や形態が私立大学の一般入試と違うことが、敬遠される理由です。特に首都圏や関西圏など私立大学専願者が多いエリアは、共通テスト離れが進むでしょう。

問題難化の背景には読解力、応用力の欠如がある
2022年度の共通テストは、平均点が下がったことから「難化した」と指摘する声もありますが、私は、問題が難しくなったとは思いません。難化したと言われる要因は、共通テストの出題形式が大きく変わったことに対して、受験生の多くが対応できてないことにあると考えます。
共通テストの特徴を簡単に言えば、問題文が長いことです。そのため受験生は、長文の問題文を理解する力がないと太刀打ちできません。共通テストでは実社会に即した内容の問題が出ます。教科書の知識を現実社会に適用していくような力、ひと言でいうなら応用力が試されます。従って、読み解く力、学んだ知識を応用して考える力が弱い受験生にとっては、共通テストは難しいと感じたことでしょう。
新しい出題形態への対策の差が生んだ「数学ショック」
大学入試センターは2017年と2018年に試行調査を実施して、共通テストからは「こう変える」という意思を示しています。ですから、変わる出題形態へしっかり対策してきた人とそうでなかった人とに差が生まれてしまったと言うべきでしょう。
2022年度の共通テストでは「数学ショック」と言われるほど数学の平均点が下がりました。しかし東京大学に合格した人の成績を調べてみると、彼らは数学でもきっちり得点を稼いでいます。彼らには共通テストの問題がやさしく感じたかもしれません。センター試験ほど事前知識を必要としない問題だからです。日本史も難しかったと言われますが、難しい歴史用語も年号も問われていません。答えはすべて、問題文から導き出せるように作られています。共通テストの形式にどう対応していくかが、良い結果を得られるかどうかのポイントです。

早期の基礎固めと模試へのトライで「読解力」を養おう
2023年度の共通テストも、おそらく2022年度程度の問題レベルだと思います。受験生の準備も進むでしょうから、平均点は多少上がるでしょう。
対策としては、早期に基本事項を固めること。そして模擬試験をたくさん受けることです。共通テストは見たことがない問題ばかりなので、数多くチャレンジするしかありません。対策を積む過程で皆さんに一番伸ばしてほしいのは、「読解力」です。共通テストに対応できる基本的な力は、読解力を含めた国語力です。どの教科にも必要ですし、入学後の学びや将来の仕事の場面でも求められますから。