
直木賞と本屋大賞のW受賞を果たした、小説『蜜蜂と遠雷』。国際ピアノコンクールを舞台に、若きピアニストたちの挑戦と成長を描いた本作が、ついに映画化!原作者の恩田陸さんは、青春小説やミステリー、ファンタジー、SFなど、幅広い作品を手がけてきた人気作家です。今回は、小説家を目指すきっかけや高校時代の思い出について、お話を伺ってきました。高校生の皆さんへの応援メッセージもお見逃しなく!
映画化が決まったときは、どのように思われましたか。
正直に言うと「なんて無謀な!」と驚きました。『蜜蜂と遠雷』は、小説という形態でしかできない表現にこだわった作品です。だから、映画化はまず不可能だと思っていました。映画スタッフの皆さんには、 “映画でしかできないこと”をやってくださいとお願いしましたが、内心では、いずれ皆さんもチャレンジの無謀さに気づいて、製作は中止になるだろうと懸念していたくらいです。
©2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
実際に完成した映画を観て、いかがでしたか。
原作のエッセンスを抽出した上で、“ひとつの作品”として仕上げていただいたことが、嬉しかったですね。小説の焼き直しではなく、まさに一本の上質な映画を観た!という満足感です。中でも4人のメインキャラクターが弾くカデンツァ(即興演奏)や、オリジナル楽曲『春と修羅』を聴いたときは、感無量でした。音楽家の藤倉大さんが、とても素晴らしい仕事をしてくれたと思います。原作の表現を丁寧に再現するだけでなく、ご自身の解釈を加えながら、ピアニスト一人ひとりの個性が反映された楽曲に仕上げてくれました。
原作小説も、ピアノの音が聴こえてくるような作品でした。なぜ本作を執筆することになったのか、教えてください。
本作品に先駆けて、大学のジャズサークルを舞台にした作品を書いたことがあります。その中で、演奏シーンを描くことが楽しかったことから、もっと本格的に“音楽”と向き合った小説を書いてみたいと思うようになりました。ピアノは幼少の頃から弾いていたし、ずっと聴くことが好きでしたので、小説のテーマとすることに迷いはありませんでした。しかし、その奥深い世界を文字に落とし込んでいく作業は、想像を絶する困難を伴いました。何度も実際のピアノコンクールに足を運び、10年以上にわたって取材を重ね、書き上げていきました。
執筆する上で、特にこだわったことは何でしょうか。
クラシック音楽を知らない人でも、面白く読めるものにすることが第一目標でした。そのために、専門用語をできるだけ使わないように注意し、いちいち調べなくても、音楽のイメージが湧いてくるような文章表現を心がけました。この目標はある程度、達成できたのではないかなと思います。
©2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会