ポジティブに向き合えば、大学生活は楽しくなるということですか。
勉強でもサークルでもアルバイトでも、自分で「頑張った」と自信をもって言えるものがあれば、就職はできるはずです。でも大学というのは不思議な場所で、志望校に落ちたとか、「親に入れと言われて仕方なく学生をやっているけれど、自分の居場所じゃない」みたいな後ろ向きの気持ちで通う人でも、学生生活を過ごせてしまう。そうであるなら、どちらの過ごし方がより楽しいかといえば、前向きでポジティブに向き合う方ですよね。
学部・学科はどのようにして決めたら良いですか。
「総合職か専門職か」ということにこだわってほしいですね。高校で講演していて感じるのは、「夢」にこだわり過ぎる高校生、先生、保護者が多いこと。今の高校生が生まれた2000年代以降、小中高教育や大学でのキャリア教育の現場で、夢の実現というフレーズが使われる機会が目立ってきました。高校の進路指導でも「夢を考えましょう」「夢の実現に向かって頑張りましょう」「夢の実現に合った大学・短大・専門学校で、学部・学科を選びましょう」という指導傾向が強く、高校生もかなり影響を受けています。しかし一方で「夢で進路を決めるのはおかしい」と主張する専門家もいます。私の考えは両方の中間の立場です。
「総合職か専門職か」の選択で学部・学科を決めるのですか。
夢というキーワードを「総合職か専門職か」に当てはめて考えてみると分かりやすいですよ。専門職は、その名の通り高い専門性が求められる仕事です。学部・学科と結びつけて考えてみると、医学部に進学すれば医師になりますし、看護学部なら看護師、医療系であれば理学療法士や作業療法士など、芸術系学部であればデザイナーや音楽家などです。このように、専門職では夢というキーワードがぴったりと当てはまります。
対して総合職は、企業の会社員や中央省庁・自治体で働く公務員です。中には専門職として働く人もいますが大半は総合職で、営業、総務、広報、法務、人事など仕事内容は多方面にわたります。そのため現在の日本の新卒者の総合職採用では、人間性や教養などが重視されます。学部・学科で学ぶ内容と仕事との結びつきが、専門職ほど強くないからです。総合職を募集する企業のほとんどが学部・学科不問なのは、こうした理由からでしょう。
確たる夢がまだない高校生はどうしたらよいでしょうか。
高校生の段階では、まだ夢を職業に結びつける必要はありません。「夢が見つからない」「なりたい職業が分からない」人は、進学後に学生生活を通して考えていく、極端に言えば、就活の時に考えても十分間に合います。夢を深刻に受け止めないことです。「進路がよく分からないけど、何となく総合職かな」という人は文系学部を選べば良いし、理系志向の人なら幅広く勉強できそうな学科を選べば良いんです。
夢の実現というフレーズは絶対的なものではありませんし、否定されるものでもありません。専門職志向の高い学部・学科に進学した人が、総合職として就職しようと考えるようになったとしても何ら問題ないのです。ただ、総合職志向の強い学部・学科に進学した後に、専門職として就職したいと考えを変える時には、学部・学科を転部する、あるいは大学を再受験することになるでしょうが、そんなパターンがあっても良いと私は思います。