楽曲には歌詞があるものと、ないものがありますが、歌詞がある曲について言えば、そのシーンを伝えるうえで適切な言葉や、物語をつづるために有効な言葉を選んでいるかの見極めを大切にしています。さらに、適切な場面、瞬間に曲を挿入できているかを見極めることも重要です。どこに曲を入れるかによって、そのシーンの意味合いが大きく変わります。ですから、言葉を理解し、瞬間を理解し、そのシーンが何を意味しているのかを理解することが大切なのです。
既存曲のリアレンジ過程においては、ビル・コンドン監督とコラボレーションしたことが大きく影響しています。「美女と野獣」に携わるのはアニメーション版、舞台版に続き今回で3度目になりますが、それまでとは異なる視点から、ビルが「こうしてみないか」と自分の意見をぶつけてくれることは、私にとって大変価値のあるものでした。
それに特別な変化はなくても、観客の耳に何かフレッシュな気持ちを与えたいという気持ちはありました。
これは監督の意向が大きくあります。2幕構成の舞台版では、1幕の終わり(ベルが彼女の父親を助けるために野獣のもとを去っていくシーン)に、野獣が「愛せぬならば」(If I Can't Love Her)※という曲を歌っています。しかし、今回の映画は3部構成でできています。そのため、同じシーンであってもストーリーの流れに応じて、曲も変える必要がありました。ただ、「ひそかな夢」(Evermore)と「愛せぬならば」(If I Can't Love Her)の2つの曲調は似ていますし、「愛とは何か」を知った野獣の気持ちを表現している点も変わりません。「彼女(ベル)は僕のもとから物理的に去ってはいるけれども、少なくとも彼女は僕の心にあり続ける」という気持ちです。
※ブロードウェイミュージカル版「美女と野獣」で、メンケンさん作曲の「愛せぬならば」(If I Can't Love Her)という楽曲が使われています。
アラン・メンケンさんが
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