3.大学入試、気になる新トレンド
理工系学部の入学定員に女子枠設置
理工系学部に女子の入学枠を設ける大学の動きが広がってきています。例えば2024年10月に東京医科歯科大学が統合する東京工業大学は、2024年度入試の総合型選抜と学校推薦型選抜に女子枠を導入し、2025年度にはさらに募集枠を増やします。神戸大学、京都大学、大阪大学も導入するなど、理工系の女子枠はこれからどんどん増えてくるでしょう。ただ、今は募集枠という間口の新設や拡大が先行している状態です。東京工業大学の2024年度入試は募集人員よりも多くの受験生が志願しましたが、女子枠の募集人員に届いてない大学も多くあります。
日本は女子の理工系入学者は少なく、内閣府「教育未来創造会議」の資料によれば、大学学部への女子入学者に占める理工系分野の女子入学者の割合は、OECD(経済協力開発機構)平均が15%に対して、日本は7%にすぎません。女子枠をきっかけに、少しずつ理工系への進学者が増えることを期待しています。
データサイエンス系の間口拡大
大学のこうした動きは、データサイエンス系にもいえることです。政府は今、デジタル・グリーン人材の育成強化を支援していて、大学でも学部新設や改組などによって受け入れ間口の拡大を進めています。しかしこれもまだ、間口が広がっているだけの状況だと感じます。目指そうとしている人には今がチャンスだということは間違いありません。ぜひ積極的に挑戦してもらいたいと思います。
学校推薦型選抜の学科試験導入
学校推薦型選抜で学力考査を課す大学が増えてきました。東洋大学は2025年度から学力型に切り替えるとともに併願が可能になります。併願可能な学校推薦型選抜は、関西圏の私立大学では定着してきましたが、首都圏ではあまり例がありません。首都圏は大学数が多く、併願可能な学校推薦型選抜が今後も増えていくのか注目しています。
受験する生徒には「学校推薦型・総合型選抜で合格しておく」→「合格したら他の併願校を受けずに第一志望校にチャレンジ」という心理が働くでしょう。受験前に滑り止めと考えていたとしても、合格した途端、第一志望校にチャレンジする気が失せてしまうことがあるのです。
高校の先生方が懸念しているのはその点で、行きたい大学に合格可能性のある生徒が、滑り止めだったはずの大学に流れてしまうことです。
「行きたい大学」を見つけ、悔いのない受験を
大学は全入時代に入り、受験生は「行ける大学」を簡単に見つけることができる時代になっています。ですが、行きたい大学があるのに、安易に他の行ける大学に進学するのは、後悔が残ります。5月〜6月になって大学を退学し、もう1回受験をやり直すという人もいます。
そうならないためにも、自分の志望校選択の基準をしっかりと持ち、行きたい大学を見つけることが大切です。低学年のうちからオープンキャンパスなどに参加することをお勧めするのもそのためです。大学の雰囲気を感じられますし、模擬講義なども聞くことができます。高校生の中には、学部の名前だけでは学ぶ内容をイメージできない人もいるでしょう。今はインターネットに多くの情報が載っていますが、それで終わりにしないで、ぜひ実際にキャンパスに足を運んでほしいと思います。
profile
城田 高士 氏(しろた たかし)
駿台予備学校 入試情報室長
駿台予備学校の東大専門校舎・医学部専門校舎や現役生専門校舎などで、長年にわたり進路指導を担当。多くの受験生を第一志望校の難関大に送り出してきた。校舎責任者を経て現職。豊富な指導経験も踏まえた入試情報の発信を行っている。