編集部がお届けする教育ニュース

  • 研究

2026/6/10

中央大学
  • 大学

台風の発生位置の移動や、上陸までの時間・移動距離の短縮傾向を明らかに

中央大学理工学術院社会理工学部都市環境学科河川・水文研究室の研究グループは、1951年から2024年までの74年間に西部北太平洋および南シナ海で発生した台風1,924個を対象に、台風の発生位置と海面水温の長期変化を解析した。
これまでの先行研究で、台風の発生位置が北上・西進していることが指摘されているが、その多くは衛星観測が始まった1977年以降の30〜40年程度の台風を対象としたものであった。また、「いつ頃から」「どの海域で」台風発生位置の変化や海面水温上昇が始まったのかについては、十分に明らかになっていなかった。
グループは、衛星観測以前を含む1951〜2024年の74年間の長期的なデータを用いたほか、解析期間を「1951〜1976年」「1977〜2002年」「2003〜2024年」の3期間に分けることで、台風発生位置の北上・西進や海面水温上昇が、いつ頃から顕著になったのかを明らかにすることを試みた。その結果、台風の発生位置は長期的に北上・西進しており、西進は1977〜2002年頃から顕著になったことが明らかになったほか、特に東南アジアに上陸する台風は、フィリピン東方海域から南シナ海側へ発生位置が移動していることが示された。さらに、ベトナムやフィリピンに上陸する台風は、発生地点が陸地に近づいたことで、発生から上陸までの移動距離と時間が有意に短くなっていた一方、上陸時の中心気圧には大きな長期変化は見られず、台風の強さは大きく変わっていないことが判明しており、台風の強度は変わらなくても、より短時間で陸地に到達することで、住民避難や防災対応の時間が減少し、災害リスクが高まる可能性が示された。
この成果は、台風の発生位置が長期的に変化し、東南アジア沿岸により近い場所で発生する傾向が強まっていることを明らかにしたほか、台風発生から上陸までの時間が短くなることで、避難や警戒情報の発表、交通機関の停止判断などに使える時間が限られる可能性があり、早期警戒システムの高度化、避難計画の見直し、港湾・河川・沿岸インフラの設計基準の再検討などに活用されることが望まれる。また、成果を台風進路、降雨量、高潮、洪水などを組み合わせた複合災害リスク評価へ展開することで、東南アジアのみならず日本を含めた広域的な防災政策への応用も期待されている。