編集部がお届けする教育ニュース

  • 研究

2026/2/18

上智大学
  • 大学

スリランカでの母親の海外出稼ぎ制限政策により、子どもの健康・教育が改善

上智大学国際教養学部の長谷部拓也准教授、コーネル大学の則友雄磨氏(同大学博士課程)、スリランカ政策研究所のBilesha Weeraratne研究員の研究グループは、母親の国際的な出稼ぎ労働を制限するスリランカの政策が、子どもの健康、教育に与える影響を検証した。
スリランカでは、女性が中東諸国へ家事労働者として出稼ぎに行くケースが多く、海外からの送金が重要な収入となっている一方、母親の不在による子どもへの影響が懸念されている。2013年、スリランカ政府は5歳未満の子どもを持つ母類の海外出稼ぎを制限する「family Background Report(FBR)政策」を導入。本研究では、この政策が子どもの健康、教育に与える効果を、家計調査データを用いて分析した。
分析の結果、本政策により母親の在宅率が上昇したことが確認されたと同時に、子どもの健康状態は改善し、特に入院率は約15%減少。海外送金額は減少したものの、国内送金額の増加によりその影響は相殺され、世帯所得における有意な変化は見られなかった。さらに、政策の直接的な対象ではなかった年長の兄姉にも、留年が約60%減少する波及効果が見られた。
母親の在宅による子育て効果と、海外送金による経済効果という2つのバランスに着目した本研究では、海外出稼ぎによる経済的機会と、母親の在宅による子育てとのトレードオフの関係を定量的に示すとともに、子どもの健康、教育への投資を通じて、子どもの将来に好影響を与える点からも、重要な意義を持つといえる。また政策の効果を実証的に評価したものであり、スリランカや他の開発途上国における出稼ぎ・移民政策の議論に貢献することが期待される。