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2025/10/8

上智大学
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クマとの遭遇リスクをAIで予測するモデルを開発

上智大学大学院応用データサイエンス学位プログラムの中許眞氏と、深澤佑介准教授は、秋田県におけるクマの出没をAIで予測するモデルを開発した。
秋田県における2023年のクマの出没は年間平均800件から3,900件以上に急増し、その要因は、クマの食料であるブナの実の凶作、中山間地域での過疎化・耕作放棄地の拡大といったクマを取り巻く環境の複合的な要因が影響していると考えられている。不測の遭遇による人身事故を未然に防ぐために、クマの出没リスクを事前に予測し、住民への警告や適切な対応策の実施が求められている。それに対応した本研究では、多様な特徴量を設計し、クマとの遭遇リスクをAIで予想するモデルを開発。過去のクマ出没記録や日時、土地被覆、人口分布、気象、道路の有無、標高、食料となるブナの実の豊凶情報など、さまざまな要因を組み合わせてクマの出没を時系列で予測した。さらに予測モデルの訓練におけるデータ不均衡に対処した結果でも、開発したモデルは正答率63.7%、適合率63.5%、再現率63.6%と、高い精度を示した。また、予測モデルの重要特徴量分析により、過去の出没状況や人工構造物、水田、竹林などの土地被覆、高齢者の人口分布、標高が特にクマ出没予測に重要な要因であることも明らかとなった。
モデルを開発した中許氏と深澤准教授は、リアルタイムの天気情報や最新のクマの出没情報を取り入れることで、モデルの予測をより迅速に反映させることを今後目指していく。この手法は、他の地域でも活用できることの確認が取れれば、全国的なクマの出没対策に貢献するものとして期待される。