総合型選抜とは?出願条件や旧AO・推薦型選抜との違いを解説

総合型選抜(旧AO入試)とは、大学受験の入学者選抜の方法のひとつです。受験生の能力や人物像、適性などを総合的に評価し、大学のアドミッションポリシーに合致する優れた人材を発掘することを目的としています。

総合型選抜は一般選抜や学校推薦型選抜などと違い、筆記試験で測れる学力だけでなく他の要素(スポーツや芸術、技能など)も高く評価されるため、大学側が多様な能力のある受験生を公平に選抜することが目的の選抜方法といわれます。

とはいえ受験生からすると、かつてのAO入試のイメージから「受験すれば合格できるのでは?」「学力はいらないし、準備も不要でラクなのでは?」など、あいまいな知識のままの人も多いのではないでしょうか。ここでは、総合型選抜とはどんな選抜方法か、旧AO入試や他の選抜方法とどう違うのか、どのようなメリットがありどんな生徒に向いているのかについて、くわしく解説します。

総合型選抜とは

はじめに、総合型選抜の概要を解説します。

総合型選抜の概要


総合型選抜は、一言で言えば「大学が求める学生を、多角的に、学力以外の要素で評価し判断する選抜方法」です。

ペーパーテストの点数は学力の客観的かつ公平な評価の指標にはなりますが、その受験生がどのような人物なのかは見えません。受験生がこれまで培ってきた教養や技能、与えられた課題に対しての論理的な思考力や対応力、自分の考えを表現する力、人間性などを多角的に見極めるための試験といえるでしょう。

一般選抜と異なり、総合型選抜ではスポーツや芸術、技能的な特技なども評価されます。たとえば「クラブ活動や課外活動を通じて優れた成績をおさめている」「第三者機関から研究発表が認められている」「一芸に特に秀でていると認められる(世界的なコンクールや大会入賞、プロ資格、タイトル獲得実績など)」があります。

出願資格は、各大学・各学部によって異なり、それぞれで設定されています。選考方法は、ほとんどの大学で書類審査、面接、小論文がメインですが、筆記審査があるところやディスカッションや実技試験があるところなどもあります。

総合型選抜の実施率|行われる大学は増えている


総合型選抜を実施する大学の数は、国立私立を問わず増加傾向にあります。多くの大学が、単なる学力試験に頼らず、個々の学生の多様な才能や能力を見極めるために総合型選抜を取り入れています。

文部科学省の調査によると、国立大学、公立大学、私立大学全てで総合型選抜による入学者数はいずれも増加していることがわかります(図1)。特に私立大学は、全入学者のうち17.3%(令和5年度)が総合型選抜で入学しており、今後もこの傾向は続くのではないかと見られています。

(図1)
実施年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度 令和5年度
国立 大学数 (73.2%)
60
(76.8%)
63
(78.0%)
64
(78.0%)
64
学部数 (55.6%)
223
(62.5%)
250
(61.8%)
243
(62.2%)
247
入学者数 (4.2%)
4,106
(5.5%)
5,342
(5.6%)
5,439
(5.9%)
5,744
公立 大学数 (39.1%)
36
(40.0%)
38
(40.0%)
38
(41.7%)
40
学部数 (30.4%)
62
(36.2%)
76
(36.5%)
76
(38.4%)
81
入学者数 (3.3%)
1,089
(3.8%)
1,287
(3.8%)
1,294
(4.1%)
1,445
私立 大学数 (86.0%)
511
(90.8%)
542
(91.4%)
550
(92.4%)
558
学部数 (79.2%)
1,485
(87.9%)
1,654
(89.5%)
1,708
(91.1%)
1,773
入学者数 (12.1%)
59,846
(14.7%)
71,292
(15.7%)
78,175
(17.3%)
85,204
(出典)文部科学省「令和5年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要

元々、AO入試と呼ばれていた頃もこの傾向はあり、平成31年当時のAO入試による入学者割合も私立大学では11%を超えています(図2)。またこの調査からは、私立大学においてはAO入試だけでなく一般選抜以外の入試方法での入学者数が半数を超えていることがわかります。

(図2)
図2
(出典)文部科学省 8.入学者選抜の実施状況等

総合型選抜の合格率


総合型選抜の合格率は、大学や学部によって異なります。一般的には、総合型選抜の合格率は一般選抜と比較してやや高くなる傾向があると言われています。

総合型選抜と大学のアドミッションポリシーの関係


アドミッションポリシーとは、大学の教育理念や特色と、それをもとに受験生にどのような能力・適正を求めるかをまとめたものです。わかりやすく言えば「どんな学生に入学して学んでほしいか」ということが掲げられているものです。総合型選抜は、このアドミッションポリシーに合致した入学者を見つけ出すための、大学側の選抜手段といえるでしょう。そのため、総合型選抜で合格を目指すならば、その大学のアドミッションポリシーは熟読しておく必要があります。

学力が選抜の基準となる一般選抜では、受験生の素養や人間性が明確にはわかりません。近年はマークシートではなく記述式、論述式の試験を課す大学も増えていますが、これは学力選抜でも学生の「+αの力」を知る方策とも考えられます。総合型選抜は、学力に偏らず入学者を集めたいという大学の意向の表れであり、近年のグローバル化や多様性を認める時代の流れに沿ったものといえます。

なお、大学ごと、また同じ大学でも学部ごとにアドミッションポリシーは異なるため、各大学の公式ウェブサイトや入学案内を参照することをおすすめします。

総合型選抜と他の入試方法との違い

ここでは総合型選抜と他の入試選抜方法が具体的にどのように異なるのか、それぞれとの違いを解説します。

現在の名称 旧名称 入試概要 現在の入試
(選抜)内容
出願時期・
入試時期
合格発表時期
総合型選抜 AO入試 学力の三要素に鑑みて学力だけでなく多様な能力を総合的に判断する 一次試験:書類選考
二次試験:面接、小論文などの形式が多い
出願が9月から。入試は9月〜11月(国公立では試験日が2月になる大学もある) 11月以降。遅くとも一般選抜より前に発表。(国公立では大学により異なるが二次試験よりは早く発表)
学校推薦型
選抜
推薦入試 出身学校長の推薦により判定される 書類選考、面接、小論文の形式が多い。小論文は試験当日書くのではなく、あらかじめ用意したものを提出するものも多い おおむね11月以降に出願。
入試は11月〜12月中
12月以降。一般選抜前には発表のことが多い
一般選抜 一般入試 学力試験を受け、一定の点数以上を取り、入学許可人数以内に入れば合格 学力試験、小論文、調査書による判定。ただし最重要視されるのは当日の学力試験。 共通テストは9月頃出願、各大学への出願は12月以降、入試は1月半ば以降 1月半ば〜3月末(4月初めになるケースもある)

総合型選抜と旧AO入試との違い


旧AO入試の「AO」とは、”Admissions Office(アドミッションズ・オフィス)”の略です。名称は「入学事務局」の意味ですが、入試の内容は「各大学やその学部・学科ごとの掲げるアドミッションポリシーに基づいた人物像に合う学生を選抜する」というものです。つまり、現在の総合型選抜とほぼ同じということになります。

AO入試が広く実施されていく中で、まったく学力を問わずに入学させる大学も増えていたことが問題となっていました。そのため、総合型選抜では新たに「学力の三要素(「基礎的・基本的な知識・技能の習得」「これらを活用して課題を解決するための思考力・判断力・表現力など」「主体的に学習に取り組む態度」)」が評価されることになったのです。これは近年の大学入試改革によるもので、「先の見通せない時代を乗り越える力をもった人材を育てる」という目的のもと、策定されています。

以前の旧AO入試と異なり、提出する小論文課題がかなり準備の必要なものになっていたり、一部では学力試験を課していたりと、総合型選抜のほうが「より学力の三要素を問う試験内容」といえるでしょう。また単なる面接ではなくディスカッションやプレゼンテーションのほか、実技(プログラミングなど)を課す大学もあります。

とはいえ、私立大学の中には、以前のAO入試とそれほど大きく選抜内容が変わっていないところもあります。出願前に、各大学の入試要項(入学者選抜要項・募集要項)の熟読は必須です。

(参考)文部科学省:文部科学白書2019. p.1 | 大学入試改革の現状について

総合型選抜と学校推薦型選抜との違い


学校推薦型選抜では、「指定校制」と「公募制」があります。

指定校制とは


「指定校制」は大学が指定した高校からのみ出願できる制度です。総合型選抜は、大学が指定する出願条件を満たせば誰でも出願可能。「出願を受け付ける枠の広さ」が、指定校制と総合型選抜の違いです。出願できる人数は高校ごとに数名ずつ、枠が決められています。指定校制は主に私立大で行われますが、国公立大学でも実施している大学はあります(居住地などの条件があります)。

特に私立大学では、高校内の選考で通過して指定校推薦を勝ち取れば合格率は非常に高いといえます。大学と高校の信頼関係で成り立っている選抜方法であるためですが、逆に言えば入学後その生徒の素行や成績が悪いと、今後その高校の指定校推薦が取り消されることもあり得るため、受験する際は注意が必要です。また基本的に、合格した後に入学は取り消せません。
総合型選抜は高校内での選抜はありませんので、個人の自由意思により受験できる点や、大学によりますが合格後の辞退や併願受験ができる点も指定校推薦とは異なります。

公募制とは


公募制は、出願条件を満たしつつ、出身高校長の推薦があれば受験できる推薦入試方式です。一般的な総合型選抜は学校長の推薦を必要としません。出願にあたって、学校長(進路指導の先生)への相談が必要かどうかが、公募制と総合型選抜の違いです。

全国の高校生と競うことになるため、競争率が高くなるのは公募制・総合型選抜とも共通しています。

出願にあたって、評定平均が必要かどうかは大学・選抜方法によって異なります。公募制一般推薦は一定以上の評定平均を求められますが、スポーツ・文化活動の実績を評価する公募制特別推薦は評定平均不要とするケースが多いようです。

総合型選抜と一般選抜との違い


一般選抜は、いわゆる学科試験が中心の入学試験です。当日の学力試験で合否が決まることがほとんどですが、大学や学部によっては面接などが行われます。また近年は小論文が課せられる大学・学部も増えています。

一方、総合型選抜は、調査書や志望理由書などの書類審査が一次選抜で行われ、二次選抜では小論文や面接という形式が多いようです。大学により異なりますが、共通テストを利用した学力試験を課す大学や、口頭試問を行う大学もあります。

総合型選抜のメリットとデメリット

総合型選抜について、かなりわかってきたのではないでしょうか。ここでは、総合型選抜を利用して受験することのメリットとデメリットを解説します。

総合型選抜のメリット


総合型選抜のメリット

【メリット1】一般選抜で合格が難しい大学にも合格できるチャンスが増える


総合型選抜も学力の三要素を問う内容になっている…とはいえ、一般選抜のように教科の学力試験結果のみで合否が判定されるわけではありません。

たとえば偏差値を50から60に上げるためには、生徒本人の大変な努力と時間が必要です。またどんなに努力して偏差値を上げたとしても、一般選抜は「当日の一発勝負」に近いものがあるため、体調不良や対策と異なる傾向の出題など、不確定な要因で当日に実力を出し切れず、不合格となってしまうことは誰にもあり得ます。

しかし総合型選抜では、大学の出願条件を満たしていれば誰にもチャンスがあり、なおかつ、事前に準備をすることができるため、一般選抜では難しい難関大学合格の可能性も高まります。実際に模試の平均偏差値55程度だった高校生が、慶應義塾大学に合格した例もあります。

また総合型選抜と一般選抜、他の推薦選抜を併願できる大学もあります。その場合は第一志望大学への受験機会が増えることになり、合格の可能性を上げることができます。

【メリット2】自分の得意や強みを活かせる


学力だけではない多角的な判定がなされる総合型選抜では、高校での勉強以外にも、自主研究や活動などに熱心に取り組んでいる人にとってはチャンスがあるといえます。特に「一生続けていきたい、これでプロフェッショナルになりたい」と思う分野があり、さらにすでに実績があるならば、その面を押し出して受験することもできるため有利です。

【メリット3】受験が早く終了するため時間が有効に使える


総合型選抜は、合格発表が11月初め〜遅くとも一般選抜よりも早い時期になります。早く大学受験が終わることで、残りの高校生活では自分の興味があること、たとえば自動車の免許を一足早く取りに行ったり、ボランティアに参加したり、留学したり…と、入学までの時間を有効に使えます。

【メリット4】受験費用の節約になる


総合型選抜は、早い時期に進路を決められるため、受験料などに多くの費用がかからないメリットがあります。

一般選抜では滑り止めも含めて、通常は最低2校以上の大学を受験します。私立大学では1回あたり3万円前後の受験料がかかり、受験回数が増えれば増えるほど、受験料がかさみます。

さらに、第一志望ではなくても、合格したら入学権利をキープするために入学金を支払うご家庭がほとんどではないでしょうか。大学によって異なりますが、私立大学の入学金は20万円以上かかることがほとんど。もし第一志望に合格してその抑えの大学への入学を辞退しても、入学金は戻ってきません。

一般選抜では、このように多くの費用がかかるうえ、お金をどれだけかけても必ず合格するとは言い切れないのもリスクです。総合型選抜は、費用面で計画が立てやすく経済的であるのは間違いありません。

総合型選抜のデメリット


【デメリット1】指定校制の推薦選抜ほど合格率は高くない


総合型選抜に対して、「いわゆる推薦入試だから、合格はラクだろう」という誤解をもっている生徒が一定数います。一般選抜と比べると倍率は低いかもしれませんし、事前準備も少なくてすむかもしれませんが、決して「ラク」というわけではありません。

特に、いわゆる難関大学の総合型選抜では、志望者数も多く、与えられる課題(志望理由書の作成内容、面接・グループディスカッション、小論文など)のレベルも高くなっています。事前に総合型選抜に詳しい先生や予備校・塾などに協力してもらい、しっかりと準備を行う必要があります。自分の意見を述べる練習や文章を書く訓練なども、付け焼刃では身につかないので、早い時期から心がけて経験しておくことが大切です。

【デメリット2】評定平均や英語の高いレベルが必要なところもある


旧AO入試は「学力不要」のイメージが強かったようです。しかし総合型選抜では、特に人気のある大学では評定平均や英語の外部試験などが出願条件になっているところも少なくありません。直前に準備できるものではないので、普段からの努力が大切になってきます。

よって、「自分は総合型選抜狙いだから、勉強はそれほどがんばらなくてもいい」と考えるのは大きな間違いです。高校1年生からの成績が見られるのですから、日ごろからコツコツと真面目に、定期テストなど学校の試験で良い成績を上げておきましょう。また英語の資格はあると有利です。難易度の高い国際系学部では、英検準1級以上、TOEIC(R)やTOEFL(R)での高スコアが出願条件になっている大学もあります。

【デメリット3】一般選抜対策が遅れるおそれがある


総合型選抜を学校推薦型選抜の「指定校制」と混同している受験生がいますが、注意が必要です。学校推薦型選抜の「指定校制」は、高校内部の選考を通過すれば合格できるケースがほとんどです。しかし総合型選抜はあくまでも「選抜」であり、倍率は低くとも不合格になる可能性は誰にでもあり得ます。

そのため、総合型選抜とともに一般選抜の準備も並行して行う生徒が多いですが、二次試験の対策を綿密に行わなければならない大学では、その準備の間に一般選抜の対策時間が減ってしまうおそれがあります。試験の機会が多くなるのは良いことですが、この点をあらかじめ心がけ、早い時期から着実に準備を行っておきましょう。

総合型選抜の出願条件

総合型選抜の出願条件は大学によって異なります。具体的な情報を知るためには各大学の入試要項を熟読することが必要です。一般的には、以下のような出願条件が必要となっている傾向があります(詳しい情報は、必ず各大学・各学部の入試要項を確認してください)。

学力要件(評定平均)


一定の評定平均値が必要な大学もあります。大学により異なりますが、難関大学ではおおむね4.0〜4.3以上が求められます。

特定の活動や実績


総合型選抜では、学力以外の要素や特技も重視されます。そのため、スポーツ、芸術、リーダーシップなどの特定の活動や実績が出願条件の一部となる場合があります。

資格など


英検やTOEIC(R)、TOEFL(R)などの成績が出願条件にある大学・学部もあります。英検ならば2級以上が目安、各検定では指定のスコア以上の認定が必要で、各検定の受験時期が1年以内などの有効期限があります。

なお英語の資格は、一般選抜でも加点されるケースや、英語資格利用受験に出願できるなどのメリットがあります。英語を高校在学中に意欲的に学び、好成績をキープしておくと、受験生になった際に選択肢が広がります。

【私立大学・国公立大学】総合型選抜の入試傾向

総合型選抜の入試は大学によって異なることはこれまでも説明したとおりです。ここでは、一般的な総合型選抜の入試傾向をまとめてみます。

私立大学の傾向


私立大学では、面接や実技試験が重視される場合が多いです。学生の多様な能力や特技を評価することを重視し、学力以外の要素にも配慮した選考を行うことが特徴です。

一般選抜の難易度が高い、いわゆる難関大学とされる大学ほど、出願要件が厳しくなる傾向があります。また試験内容も「学力の三要素」を見るため、さまざまなパターンで課されます。

国公立大学の傾向


国公立大学の傾向もおおむね私立大学と同じですが、理系実技や英語での口述試験など学部ごとにさらに細かく設定されます。また募集人数は私立より少ない傾向があります。

たとえば東京医科歯科大学の医学部総合型選抜(国際バカロレア方式)では、志願理由書のほかに課題論文や学習成果レポート、英語の成績証明書、国際バカロレア資格(成績・履修条件あり)の提出が必要です。また論文試験があり大問2問、難易度は一般選抜とほぼ同じです。さらに面接はプレゼンテーションと質疑応答があります。東京医科歯科大の一般受験は国立大学医学部の中でもかなりの難易度の高さですが、総合型選抜も国際バカロレア資格がかなりの難関であることに加え、面接やプレゼンテーションのための下準備が必要なことから、同等以上の難易度の高さであることがわかるのではないでしょうか。

【私立・国公立共通】面接重視が多いため対策が必要


総合型選抜では私立・国立を問わず面接が重視され、ほとんどの大学で面接が課されます。よって、面接対策は必須です。

面接では、学生は自己分析した結果をもとに能力や特技、これまで頑張ったこと、長所と短所、将来の夢、志望動機などを話すことになります。適切な準備を行い、自己表現やコミュニケーション能力を磨くことが重要です。また面接で問われる質問内容の傾向については、過去の出題傾向を必ず確認しましょう。

予備校や塾、高校の先生に依頼して、必ず模擬面接を練習してください。プレゼンテーションやディスカッションでは、自分の「意見」をわかりやすく、そう考えた根拠も示しながら伝えなければなりません。特にプレゼンテーションは、社会に出てからも役立つスキルです。最初に結論を述べ、その根拠になる具体例、さらに反論と再反論などを論理的に進める必要があります。

何より重要なのは「その大学で学びたい」という意欲を見せること。自分が何故この大学に入学したいのか、そのためにどんな努力をしてきたのか、しっかりと言葉と態度で熱意を伝えられるよう、練習しましょう。

総合型選抜は専願がほとんど。ただし併願できる大学もある

ここでは専願と併願の意味と、総合型選抜の傾向を解説します。

「専願」「併願」とは?


一般的な「専願」とは、特定の大学のみに出願することを意味します。つまり、その大学を第一希望として出願し、他の大学への出願は行いません。

一方、「併願」とは、複数の大学に同時に出願することを指します。これにより、異なる大学への進学の可能性を広げることができます。

総合型選抜はほぼ専願だが併願できる大学もある


総合型選抜においても専願と併願があらかじめ決められており、ほとんどは専願です。ただし一部の大学では併願が認められています。同じ大学内・他学部での総合型選抜と学校推薦型選抜の公募制との併願が可能な大学もあれば、認められない大学もあります。自分の志望大学の入試要項を確認しておきましょう。

不安な場合は高校の進路担当の先生や予備校・塾に相談することをおすすめします。また大学のオープンキャンパスに参加して、直接尋ねてもよいでしょう。オープンキャンパスの時点で併願だから不合格にされるなどということはありませんので、安心して疑問に思うことを尋ねましょう。

専願で不合格になったら一般選抜で再チャレンジできる


「専願でもし総合型選抜に落ちてしまったら、浪人?」と不安になってしまいますよね。総合型選抜で専願であっても、不合格になってしまった場合、一般選抜への出願は可能です。不合格だった場合も考えて専願と併願どちらに出願するか、一般選抜はどこを出願するかなどスケジュールを組み立てる必要があります。

総合型選抜での受験準備を進めながら、一般選抜のための勉強もしっかり行っておきましょう。「どっちも準備するなんて大変だから無理」と考えるか、「2回も受験のチャンスがあるなんて、ラッキー」と考えるか。大学受験は、自分の考え方一つで可能性が広がりも、狭まりもします。自分の立ち位置をポジティブにとらえ、第一志望大学合格への道を探りましょう。

総合型選抜に向いている生徒


「総合型選抜に向いている生徒」はどのような生徒なのでしょうか。ここでは総合型選抜にぜひ挑戦してみてほしい生徒のタイプを解説します。

英語の能力が高く資格を有している人


総合型選抜では、学力試験の一環として英語の試験が行われる場合があります。そのため、英語の能力が高い生徒は総合型選抜に向いているといえるでしょう。また英語の資格は、出願要件に含まれる大学が増えていることから、出願できる大学の選択肢が広がるというメリットもあります。

部活動での好成績、特定の分野に秀でた能力を持っている人


総合型選抜では学業成績だけでなく、受験生の特技や能力を総合的に評価します。スポーツや部活動、芸術、科学的な研究発表の実績、社会的な貢献による表彰など、特定の分野で秀でた能力を持っている場合は総合型選抜に向いています。

将来の夢が明確ですでに具体的に活動している人


総合型選抜では志望動機や将来の目標を面接で尋ねられ、発表することが多いようです。将来の進路やキャリアプランを明確に持ち、既に具体的な活動や経験を積んでいる生徒は総合型選抜に向いています。

大学は、大学でこれまでの学びをより深められる受験生に入学してほしいと考えています。そのため、面接やプレゼンテーション、口頭試問などで、かなり深く「何に興味があり、これまでどんな学びを行ってきて、どのような考えをもっているか」について訊かれるでしょう。この選抜形式で受験生の主体性や行動力を評価するため、将来の展望を持ち、主体的に取り組んでいるものがあり、深く考察でき、自らの考えを伝えられると評価されやすいと考えられます。

とはいえ、面接官はいずれも、さまざまな分野で研究を長年行ってきたエキスパートです。付け焼刃の知識程度ではすぐに答えに窮してしまうかもしれません。よって、総合型選抜での合格を目指す受験生は、早い段階、たとえば高校2年生の夏ぐらいから、自分のテーマを決めてそれを深く掘り下げる研究や活動を行っておくとよいでしょう。

これらは、あくまで一般的な傾向です。総合型選抜は複数の要素が総合的に評価されるため、各大学・学部の選考要件や評価基準は各大学の入試要項を確認し、自分の強みを生かせる入試方法を選択することが重要です。またここまで読んで「自分は総合型選抜に向いていない」と落ち込む必要もありません。大切なのは、少しずつ学びを深め、興味のあることが出てきたら自分で調べて、少しずつ自分の知識として取り込んでいくことです。継続しているうちに、総合型選抜での受験にふさわしい学力や素養、深い洞察力や表現力が身についているかもしれません。

総合型選抜の対策方法

総合型選抜に備えるための対策方法を解説します。できることからすぐに始めてみてくださいね。

志望大学に合った対策を行う


各大学の入試要項や過去の出題傾向を確認し、志望する大学に合わせた対策を行いましょう。例えば、必要な評定平均値、必要な資格、面接や小論文の評価基準などを把握し、それに合わせて学習計画を立てることが重要です。

自己PRの準備をする


面接や小論文では自己PRが求められることがあります。自分の強みや特技、将来の目標について考え、自己紹介や志望動機、将来の展望について具体的な言葉でまとめる準備をしましょう。自分自身を客観的に見つめ直し、アピールポイントを明確にすることが重要です。

頼れるサポーターを見つけておく


総合型選抜の対策は、受験生ごとに成績や目指す分野、長所短所に合わせて柔軟に行わなければなりません。画一的な指導では難しいため、総合型選抜での合格実績がある予備校や塾、講師を探すとよいでしょう。

面接や小論文は総合型選抜で重要な要素です。総合型選抜に詳しい(合格実績をもっている)先生や予備校・塾の講師に相談し、対策を行うことをおすすめします。

まだ総合型選抜は合格者数や実例も少ないため、受験準備を進めているうちに不安になることもあるかもしれません。周囲のサポートを活用することは大切です。わからないことや悩みがあったとき、相談し解決できる場や指導者を、早めに見つけておいてくださいね。

まとめ

この記事では、総合型選抜(旧AO入試)について解説しました。

大学受験における総合型選抜の受験形式は一般選抜とはかなり異なり、面接などで自己を表現できるかどうかが問われます。大学により傾向や試験内容はさまざまですが、大学のアドミッションポリシーに沿った「自ら学びを深める意欲がある」受験生を大学が選抜するための入試であることはどの大学でも共通しています。受験生にとっては、第一志望の大学に入学できるチャンスが増えるメリットが大きいでしょう。ただしその分、しっかりとした準備も必要です。

総合型選抜で合格を勝ち取るために、早い時期から情報を集め、勉強やそれ以外の活動も
準備を怠らないように、充実した密度の濃い高校生活を送るようにしてくださいね。

記事提供


執筆者名:塾探しの窓口 編集部
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