改革2年目となる2022年度大学入試、志願者動向とねらい目の学部・学科を読み解く

2年目となる大学入学共通テスト。2022年度入試で受験生はどう動くのか。不透明な経済環境の中、ねらってみたい学部・学科はどこなのか。そして受験生はどんな心構えで入試に臨むべきか。駿台教育研究所 進学情報事業部の石原賢一部長にお話をうかがいました。

1 2022年度入試、志願者の動き

2022年度の大学入学共通テストは間違いなく難しくなる

2021年度から実施された大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は当初の予定されていた制度設計から変更が多くあり、受験生にとってはかわいそうでした。2022年度入試については、2021年6月4日に文部科学省が入試日程を発表し、2022年1月15日(土)・16日(日)に本試験、追試験は本試験の2週間後に実施されることが決まりました。追試験の会場だけが未定ですが、今の状況だと例年通り東京1カ所、京阪神1カ所になるのではないでしょうか。

2022年度の共通テストは難しくなります。2021年度が易し過ぎましたから。過去の共通一次試験、センター試験でも2年目、3年目は難しくなっており、共通テストも同じ傾向だと思います。

中堅レベル以下の私立大学志願者で共通テスト利用方式を考える受験生は、大幅に減ると思います。特に文科系の受験生です。2021年度の共通テストでは私立大文系3教科型の平均点が下がりました。理由は、英語で点が取れなかったから。共通テストの英語は私立大学のマーク式の英語とまったく違う出題形態になったので、中堅レベルでは共通テスト、私立大学それぞれに対策をしようという受験生は減ると思います。早慶、MARCH、関関同立クラスが第一志望の受験生はそれほど苦にしませんでしたが、中堅レベル以下のボリュームゾーンの受験生には厳しい試験内容だったと言えます。

駿台教育研究所進学情報事業部長 石原賢一氏

コロナが収束しない場合は“内向き”志向が強まる

2022年度入試の志望者動向ですが、現時点(2021年7月27日)で予測するのは、非常に困難です。例年なら、今年実施した模試と前年同時期の模試とを比較・分析して予測を立てるのですが、前年の模試が新型コロナウイルスの影響で、一昨年の受験者数から最大で4割ほど減ったためにデータ分析が難しく、今年の模試結果との単純比較が難しいからです。2022年度入試の動向が見えてくるのは、11月頃ではないでしょうか。比較が困難なもう1つの要因は、新型コロナウイルスがどうなるかということ。もし収束しないようなら、受験生は2021年度以上に内向き志向になるでしょう。つまり、レベルの高い大学への挑戦を避け、従来通りの出題形式の大学、自宅近隣の大学を志願する傾向ですね。

「理高文低」の国公立大学、外国語・国際関係の減少が目立つ私立大学

駿台では2021年5月末に第1回全国模試を実施しました。この模試は上位層の受験生が中心の母集団なので、きちんと分析できるのはMARCH、関関同立クラス以上の大学を志望する受験生の動向です。以下に紹介する数字は、2020年模試の志望者数を100とした場合の2021年模試の志望者数を指数で示したものです。

国公立大学の志望者指数は103、私立大学は114でした。私立大学の増加率が大きいのは、2020年模試がコロナ禍で行われたため、国公立大学志望者が多い中高一貫校の在籍生などが中心で学校一斉休校の影響を大きく受けた私立大学専願層の受験者が減少していたことが影響しています。

国公立大学文科系では、外国語(84)と国際関係(78)が大幅減。理科系では理(112)、工(108)が増加で、2020年模試に続いて「理高文低」の傾向が見えました。メディカル系では医、薬はともに108と増加で、文理両方から志望できる系統では、総合科学が109と増。これはこの系統に含まれるデータサイエンス系の人気の高さが影響しています。

指数114となった私立大学も国公立大学と同様の傾向で、特に外国語の減少(83)が目立ちます。理科系は理(127)、工(117)が大幅に増加し、全体の志望者数も増えています。ただメディカル系は国公立大学ほどの増加はありません。データサイエンス系を含む総合科学は138と大幅増。スポーツ・健康は85と大幅減で、これは国公立大学も同様の傾向です(91)。

「理高文低」の国公立大学、外国語・国際関係の減少が目立つ私立大学

中堅レベル以上の大学に限れば2022年度入試に大きな変化はない

この模試結果から読み取れるのは、中堅レベル以上の大学志望者の動向は、2021年度入試とほとんど変わっていないということです。理科系や国公立大学の医学部が好調なのも前年度同様です。

国公立大学は、2021年度入試の志願者数は前年度比で3%減でしたが、2022年度も数パーセント減ぐらいだと思いますので、大きな変化ではありません。準難関大、つまり筑波大学、千葉大学、金沢大学、岡山大学、広島大学以上のレベルでは、ほとんど志望者数は変わってないです。また、コロナ禍対策で個別試験を中止した選抜方式を元に戻す横浜国立大学や宇都宮大学などの志望者数は増加して2020年度レベルに戻ると思います。私立大学の一般選抜受験生がどの程度減るのかは、現時点では正確には分かりません。中堅レベルのボリュームゾーンの大学が総合型選抜(旧・AO入試)や学校推薦型選抜(旧・推薦入試)で受験生を集めることを強化すると、一般選抜の受験生は減る可能性があります。難関大学では、例えば早稲田大学では、文・文化構想学部の一般選抜の定員を減らし、他の入試制度の拡充を目指しています。併願校数についてはコロナの収束がはっきりしない場合には、2021年度入試同様、受験生に内向き志向が働き、増えないと思います。

こうした点から志望動向の全体像としては2021年度入試と大きな変化はないと見ています。理科系や国公立大学の医学部が好調なのも前年度同様です。