2027年度を見据えた大学入試の傾向は? 受験のプロにインタビュー

2.2027年度入試の展望

私立大学の一般選抜は「少数派」。年内入試はさらに拡大

駿台予備学校 入試情報室長 城田 高士氏

私立大学では入学者の6割以上が学校推薦型選抜や総合型選抜といった「年内入試」で決まっていて、一般選抜での入学者は4割を切っています(2025年度実績)。学校推薦型選抜は募集人員が入学定員の半分までという制限がありますが、総合型選抜は今後も拡大が見込まれます。大半の大学は、定員割れを防ぐため、早期に入学者を確保せざるを得ないというのが現状です。一部の大学では、より優秀な層を早期に囲い込む狙いもあって、選抜性の高い大学とそうでない大学に二極化が進むでしょう。一般選抜は今後、「志の高い一部の受験生」のための入試という位置づけに変わっていくと予想されます。

慶應義塾大学経済学部が2教科入試に、影響は他大学にも

2027年度入試で注目したいのが、慶應義塾大学経済学部の入試変更です。これまで課されていた小論文が廃止され、「英語・数学」または「英語・地歴」の2教科入試に切り替わります。受験科目が減ることで対策の負担が下がり、志願者増加が見込まれます。この動きを受け、他大学が追随して科目数を減らす可能性も指摘されています。

上位層の争奪戦――東北大の「AO入試」拡大とゲートウェイカレッジ

上位受験生を年内入試で取り込む動きも活発化しています。東北大学は「AO入試」の拡大方針を打ち出しており、2027年度には学部を決めずに2年間学ぶ「ゲートウェイカレッジ」も新設予定です。3年次に本人の適性を踏まえて進路を選ぶ仕組みで、東京大学の入学後に進学選択を行う制度を意識した設計とみられ、東京大学や京都大学を目指すような学力層の取り込みを狙った動きといえます。

年内入試の「面接」をめぐる攻防

学力試験に加えて面接を課す年内入試のあり方も今後の焦点です。2027年度に新規導入予定だった大学の中には、面接をめぐる課題から導入を中止する動きも出ています。数万人規模の受験者に対して面接を実施する負担は大きく、AIによる面接動画審査などが導入される可能性もありますが、総合型選抜や学校推薦選型選抜の本来の趣旨に合った方法として認められるかは疑問です。一方で筑波大学は2028年度から、一部学部を除く一般選抜でも面接を導入する方針を打ち出しています。「面接をしっかり実施できる大学かどうか」も今後の大学選びの一つの視点になりそうです。

女子枠は拡大するも理系選択率自体は横ばい

2027年度を見据えた大学入試の傾向は?

理工系学部における「女子枠」は着実に広がっています。2025年度に神戸大学などが導入し、2026年度からは京都大学や大阪大学などでも新設されました。駿台・ベネッセ共通テスト模試(受験者約40万人規模)のデータでは、国公立大学志望の女子受験生のうち工学部系志望者の比率は過去10年で7.8%から9.8%へ、理学部系志望者は3.2%から3.8%へと、いずれも緩やかな増加傾向にあります。ただし、女子受験生全体に占める理系選択者の比率自体は2025年度48.3%、2026年度47.2%とほぼ横ばいです。私立大学志望者においては約30%にとどまります。理系を選ぶ女子生徒そのものを増やさない限り、理工系分野での女子比率向上には限界があるといえそうです。

共通テスト利用方式は伸び悩みへ、外部検定はさらに定着

共通テストはセンター試験と違って私立大学と出題傾向が異なっており、私立大学専願者にとっては共通テスト利用方式のメリットが薄れつつあります。私立大学専願者の間では「共通テスト離れ」が今後さらに進む可能性が高く、共通テスト利用方式そのものが大きく拡大していく可能性は低いとみられます。一方、英語の外部検定利用は学校現場で定着しており、長文読解や速読力が重視される近年の英語入試の傾向とも相性が良いため、今後も活用の広がりが見込まれます。

3.大学入試、気になる新トレンド

淘汰の時代、上位大学への一極集中はさらに進む

私立大学の定員割れは5割程度の水準で続いています。駿台予備校が調査した511校では、全体の約1割にあたる上位54大学が一般選抜全受験者数の75%を占め、残る457大学が残り4分の1の受験生を分け合う状況です。財務省が掲げる250校程度削減という数字の実現性はさておき、文科省の推計では2040年には受験生が現在の約70%まで減少するので、政策の有無にかかわらず大学は100〜200くらい減る可能性は十分あります。この「淘汰される側」の大学が減ったとしても、大学入試全体への影響は限定的というのが実情です。

地方大学は「地域密着学部」で活路を探る

地方では、共通テストの現役志願者が2,000人程度しかいない県も複数あるほど少子化が深刻です。それでも地元進学の需要を支えるため、各地方大学は「地域密着型学部」の新設で存続を図っています。具体的には、福井県立大学の「地域政策学部」、佐賀大学の「コスメティックサイエンス学環」、熊本県立大学が2027年に新設する「半導体学部」など、地元の産業や特性に合わせた学部が相次いで誕生しています。地域の発展や地元企業への就職につなげることで、学生の地元定着を図る狙いです。

理系人材は増えるのか? 文理融合の理想と現実

政府は理系人材の育成を掲げていますが、受験生の実際の選択は文系シフトが続いています。就職状況が厳しくないこともあって、無理に苦手科目の数学を克服してまで理系に進む必要性を感じない受験生が増えているからです。背景には、中学生の段階で数学につまずく生徒が多いという根本的な課題があり、理系人材が増えるまでにはまだいくつものハードルがありそうです。「文理融合」を掲げる学部が増えても、実態としては文系寄り理系寄りいずれの生徒も入学できる間口が広がっただけというケースも少なくありません。

少子化&AI時代に問われる「大学に進学する意味」

少子化とAIの進化が加速するなか、2040年頃を境に大学進学をめぐる価値観が大きく変わる可能性も指摘されています。文系人材が余る一方、高校卒業後に専門性を身に付けて働くほうが有利になる時代が来るとの見方もあり、大学に進学すること自体のコストパフォーマンスが問い直される局面が訪れるかもしれません。

「行ける大学」ではなく「行きたい大学」を

偏差値だけでなく大学の中身を調べて選ぶ風潮は年々強まっています。しかしその一方で、安易にレベルを下げて進学した結果、「周囲の学力レベルが物足りない」と後悔し、再受験するケースも見られます。大学の難易度は、入学後にどのような仲間と切磋琢磨できるかを測るひとつの指標でもあります。オープンキャンパスでの見学やホームページや大学案内の情報だけで魅力的に見えるのはどの大学も同じ。表面的な情報だけに頼らず、入学後の学習環境まで見据えた大学選びが求められます。

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城田 高士(しろた たかし)氏
城田 高士 氏(しろた たかし)
駿台予備学校 入試情報室長
駿台予備学校の東大専門校舎・医学部専門校舎や現役生専門校舎などで、長年にわたり進路指導を担当。多くの受験生を第一志望校の難関大に送り出してきた。校舎責任者を経て現職。豊富な指導経験も踏まえた入試情報の発信を行っている。