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2026/7/1
東京科学大学
東京科学大学環境・社会理工学院 社会・人間科学系の河野洋人博士後期課程学生(研究当時、現 国立科学博物館研究員)は、日本独自の学問分野「物性物理学」が、その初期にどう形成・変容してきたかを「名前」や「ことば」の観点から明らかにした。日本における物性物理学は、基礎から応用・実用に至るまで顕著な業績が数多く挙げられてきた。現代日本の物理学において重要な位置を占めており、物理学の中で研究者人口が最も多い分野であるとされている。その一方、「物性物理学」という語には、英語などの外国語にそのまま対応する訳語が存在せず、対応語として用いられている「Condensed Matter Physics(凝縮系物理学)」や「Solid State Physics(固体物理学)」も、その範囲は重なるものの完全に一致するとは言えず、成立の経緯も異なっているという背景があった。それゆえ、「物性物理学は日本独自の学問分野である」としばしば言われてきたが、その成立過程については、これまで科学史の中では十分に研究されてこなかった。研究では、かつて日本の物理学で物質を扱う研究分野を指すのに用いられていた「物性論」という、今日の「物性物理学」につながる語に注目。近代日本において教育的文脈で用いられていたが、1940年代に入ると新たな研究動向を指す語として再編されていったことや、物質に関わる多様な研究領域が紐づけられるとともに、この語が広く定着していったことを示した。さらに、研究者たちがこの語をどのような研究活動と結びつけ、どのような分野との間に境界を設定し、また国際的な文脈でどのように翻訳しようとしたのかを検討することで、学問分野が言語的・制度的実践の中で形づくられていく過程を明らかにすることで、科学の分野形成を「ことば」の変化と定着から捉える科学史研究の可能性を示した。この成果は、科学史研究において、学問分野をあらかじめ存在する自明な枠組みとして扱うのではなく、それ自体が歴史的に形成された対象であると捉える視点を示すとともに、「ことば」への着目という具体的なアプローチを提案している。また、これを応用することにより、さまざまな分野において、その動的な過程や多様なアクターに光が当たることが期待される。また、この視点を他国や他分野に広げることで、国際的に共有された科学の歴史の背後にある、翻訳・分類・制度化といったプロセスをより適切に捉えることも期待される。
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