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2025/4/16
上智大学
上智大学経済学部・中村さやか教授と、中国・きなん大学経済与社会研究院・丸山士行教授は、日本の公立中学校の給食が子供の肥満に与える影響を分析し、社会経済的地位の低い世帯の子供に肥満減少効果があること、また、その効果が卒業後数年間は持続することを明らかにした。分析は、厚生労働省による国民栄養調査(現・国民健康・栄養調査)の1975〜1994年の個人レベルのデータを用いて実施。日本では公立小中学校で給食が提供されていれば原則として全員が摂取する点や、ほぼすべての公立小学校では給食提供があるが、公立中学校では市区町村によりその有無が分かれている点を利用し、中学校給食のある地区とない地区とで小学生4〜6年生と中学生の体型指標の差を比較する差の差分析を行った。その結果、全体では中学校給食による体重や肥満への有意な効果はみられなかった。その一方、分析対象を非ホワイトカラーの父親の子や一人当たり世帯支出が低い(社会経済的地位の低い)世帯の子供に限定すると、中学校給食によりボディマス指数(BMI)や肥満度、肥満が有意に減少することを示された。肥満の有意な減少は、母親のBMIが高い子どもやエネルギー摂取の多い地域の子供など、エネルギー過剰摂取のリスクが高い子供に限定した際の結果でも同様にみられており、給食によってエネルギーの過剰摂取を抑制することで肥満を減少させたことが示唆されたと考えられる。さらに、社会経済的地位の低い世帯の子供への給食の肥満減少効果は、中学卒業後の15〜17歳にもみられたことから、給食を食べることで直接的に肥満が減少するだけでなく、学校給食が食生活の改善を通じた長期的な肥満抑制効果を持つことが示唆された。なお、学校給食による痩せすぎへの影響は全くみられなかった。分析結果は、学校給食が社会経済的地位の低い世帯の子供に対して肥満抑制効果を持つことを示唆しており、生徒全員を対象に厳しい栄養基準に基づいて栄養バランスの取れた昼食を提供する日本の学校給食や、給食を教育の一部として位置付ける「食育」の高い価値を示すものとなった。また費用対効果の評価にあたっては、小中学生の栄養状態改善による直接的かつ短期的な効果だけでなく、食習慣改善による長期的効果を考慮する必要があることを示唆している。
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