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2022/11/9
酪農学園大学
北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所の大森亮介准教授、酪農学園大学獣医学群獣医学類の松山亮太助教、農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究部門の山本健久博士と早山陽子博士は、野生動物におけるワクチンによる免疫効果を測定するための分析手法を開発した。野生動物で流行する感染症を制御するための対策の一つとして、経口ワクチンの散布が実施されている。経口ワクチンによる効果を適切に評価することは、散布するワクチンの量の目標値を決める上で不可欠であるが、野生動物の個体数や移動についてのデータは不十分であることが多く、また、野生動物のワクチンの摂食状況の把握が難しいこと、自然感染による抗体獲得とワクチンによる抗体獲得の区別ができないことから、ワクチンの効果を評価することは困難であった。本研究では、野生動物の個体数と移動やワクチンの摂食歴に関するデータがない状況でも経口ワクチン散布の効果を測定できるよう、野生イノシシの検査で得られた感染個体の割合、免疫保持個体の割合と、経口ワクチンの散布についての時系列データを利用した測定手法を開発。この手法を用いて、日本でイノシシを対象に散布されている豚熱ワクチンの効果を推定したところ、2019年3月から8月までに岐阜県内で実施された4回のワクチン散布によって免疫を獲得したイノシシは、初回のワクチン散布時に生息していたと考えられる個体数の12.1%(95%信頼区間;7.8-16.5%)であったと推定された。野生イノシシでの豚熱の感染状況を改善するためには、地域における野生イノシシの免疫獲得割合が一定の程度に達する必要があると考えられており、今回、感染による免疫獲得に加え、経口ワクチンによる免疫獲得により、観測期間における免疫個体の割合は最終的におよそ70%に達していたと推定された。国内で実施された豚熱の経口ワクチンの効果が定量的に確認されたのは初めてであり、今後、この手法で推定されたワクチン散布の効果を踏まえた散布方法の検討や散布後の効果の評価が可能になると考えられるほか、開発された推定手法は、野生動物で流行する様々の感染症のワクチン散布の効果推定への応用が期待されている。
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