【完全ガイド】奨学金の種類と借りる条件は?返還方法・期間、学費を用意する方法まで解説

大学進学に際し、奨学金の利用を考える高校生も、少なくないのではないでしょうか。
奨学金制度は、経済的困難な事情を抱える学生や成績優秀な学生を支援するため、進学・修学に必要な資金の給付や貸与を行う制度です。

今回の記事では、奨学金制度の概要をわかりやすく解説します。さまざまある奨学金の種類やそれぞれの違い、知名度は高くないもののメリットが大きな奨学金も紹介します。よくある質問とその答えも、Q&A形式でまとめました。

最後まで読むと、「奨学金とは何?」という疑問がきっと解決します。じっくり、読んでみてください。

※ 奨学金は、提供団体や対象者によって、受給条件が変わります。本記事ではおもに「国内の4年制大学への進学に際し、奨学金の受給を希望する高校生」を対象に解説します。

奨学金の用途

奨学金は、進学・修学にあたって学校に納める費用(学費:入学金や授業料)以外には使えない、と心配する人もいるでしょうか。
実は、多くの奨学金は、使い道が指定されていません。「進学に必要な費用」であれば、学費以外、つまり生活費や家賃、教材購入費などへの充当も可能です。
奨学金は、進学・修学で必要なあらゆる場面に使えるお金と考えて支障ありません。

奨学金の種類と受給条件

「奨学金」と一括りにいわれますが、実は「給付」「貸与」「条件付き給付・貸与」の3種類に分かれます。奨学金の種類によって、受給条件も変わります。
最初に奨学金の全体像を把握しましょう。給付型奨学金と貸与型奨学金、条件付き給付・貸与奨学金の違いを解説します。

給付型奨学金とは

給付型奨学金は、名前の通り「給付」される奨学金で、返還義務はありません。ただし、受給条件は、貸与や条件付き給付・貸与に比べて厳しく、採用人数も少ない傾向があります。
給付型奨学金には、さらに規定額支給タイプと、入学金・授業料等が減免されるタイプとに分かれます。

多くの学生が利用する日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金は、規定額の奨学金給付に加え、入学金・授業料の減免(制度対象校のみ)も付与されます。

貸与型奨学金とは

貸与型奨学金は、大学在学中に奨学金の「貸与」を受け、卒業後に返還する奨学金です。
貸与された金額のみを返還する「無利子型」と、規定の返還利率が上乗せされた金額を返還する「有利子型」とに分かれます。採用基準は、無利子型のほうが厳しくなっています。

条件付き給付・貸与奨学金とは

卒業後、指定地域や職種等での勤務を条件とし、奨学金を給付・貸与する制度です。医師の不足を解消するための「医学部地域枠」で貸与される奨学金が、代表例です。
また、大学によっては、条件を満たせば返還義務を免除する独自の奨学金を用意するケースもあります。

奨学金を用意するおもな団体・機関

「奨学金は、どこで借りられるのか」「日本学生支援機構以外に、奨学金を借りられる団体はあるのか」と、疑問に感じる高校生もいるかもしれません。
実は奨学金は、さまざまな団体が用意しています。この章では奨学金を給付・貸与しているおもな団体・機関を、3つ紹介します。
奨学金を用意するおもな団体・機関

日本学生支援機構

日本学生支援機構(JASSO)は、奨学金を中心とした総合的な学生支援を手掛ける独立行政法人です。前身は日本育英会といい、長年、日本の奨学金事業の中核的役割を担ってきました。
日本育英会は保護者層にもなじみ深い団体で、いまでも「奨学金と言えば、日本育英会/日本学生支援機構」と真っ先に名前が上がる人も、多いはずです。

日本学生支援機構の奨学金は、おもに「給付奨学金(返還不要)」「貸与奨学金(返還必要)」の2種類です。貸与奨学金は、さらに第一種(無利子)と第二種(有利子)に分かれます。

給付奨学金(返還不要)の受給条件

日本学生支援機構の給付奨学金(返還不要)を申し込めるのは、要件を満たした大学や短期大学、高等専門学校(4年・5年)、専門学校に進学する学生です。
また、家庭の世帯収入や資産も、要件を満たしているか審査されます。給付型奨学金の受給要件は、「住民税非課税世帯、または準じる世帯」であることが一つの目安です。家族構成等によってさらに細かく条件が設定されているため、詳しくは日本学生支援機構のホームページでご確認ください。

あわせて、給付型奨学金の申し込みには、成績基準も設けられています。給付型奨学金を大学進学前に予約したい場合、高校1年次〜奨学金申込時点までの全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上でなければなりません。
また、進学後に貪欲に学び続ける意欲があるかどうかも、重視されます。

給付型奨学金の支援額は、世帯収入によって変動します。また、給付奨学金を受ける奨学生は、進学先の大学にて入学金・授業料が減免されます。

貸与奨学金(第一種・第二種)

日本学生支援機構(JASSO)の貸与奨学金は、返還利子がつかない第一種と、利子を加えた金額を返還する第二種とに分かれます。

第一種と第二種は、申込みできる学力基準が異なります。
種別 学力基準
第一種 高校1年次〜奨学金申込時点までの、全履修科目の評定平均値が5段階評価で3.5以上
第二種 高校での学業成績が平均水準以上

第一種の学力基準に満たない高校生も、世帯収入等の要件を満たし、かつ強い学修意欲があると高校が推薦する者であれば、第一種奨学金に申込できる場合があります。

なお、第二種奨学金に加算される利率は、一律ではありません。諸条件に基づき、算出されます。また、利率の加算方式は次の2種類から選択します。

・利率固定方式:貸与終了時に決定した利率が、返還完了まで適用される
・利率見直し方式:おおむね5年ごとに利率が見直しされる

地方自治体

地方自治体が奨学金を用意し、学生の進学を応援するケースもあります。一例として、東京都港区と山梨県北斗市の奨学金制度を紹介します。

東京都港区の奨学金制度

東京都港区は、住民税非課税世帯から世帯収入が一定額未満の世帯を対象に、大学進学に際して規定の奨学金を給付する制度を実施しています。申し込む学生本人には、学業成績基準を満たしていることが求められます。
給付額は、月額24,600円〜134,200円(夜間学部以外の4年制大学の場合)です。あわせて、入学時に必要となる資金の給付も実施されています。

(参考)給付型奨学金について|東京都港区

山梨県北斗市の奨学金助成制度

地方自治体の中には、地域への定住や指定の職に就くなどの条件を満たした人に対し、返還中の奨学金を助成する制度を設けるところもあります。

山梨県北斗市は、大学卒業後に市内に定住・就業(求職中含む)した35歳未満の人を対象に、返還奨学金の全額〜半額を助成します。全額助成の上限は年額30万円、半額助成の上限は年額10万円です。助成期間は5年間です。

(参考)北杜市奨学金返還支援事業助成金|山梨県北斗市

こうした自治体の制度を利用すると、日本学生支援機構(JASSO)などから貸与された奨学金の返還負担を軽減できます。

大学や短期大学など

学校側も、奨学金を用意して学生の修学を支援します。国立大学と私立大学、それぞれの奨学金の例を見てみましょう。

国立・東北大学の奨学金

東北大学は、経済的な理由で修学が困難な学生を支援する「東北大学元気・前向き奨学金(修学支援奨学金・給付型)」や、化学工学分野エンジニアの卵を支援する「JFEスチール奨学金(給付型)」、東北大学の大学院へ進学する文系学部生を支援する「小泉貴・泰子奨学金(給付型)」などを用意しています。
奨学金 支給者数 受給額
東北大学元気・前向き奨学金 50名程度 月額3万円(年額36万円)を一括支給
JFEスチール奨学金 1名 月額3万円(年額36万円)を半期ごとに支給
小泉貴・泰子奨学金 4名 月額5万円(年額60万円)を一括支給

いずれも、学業成績が優秀であることも条件となります。

(参考)各種奨学金の募集・案内|東北大学

私立・ 近畿大学の奨学金

近畿大学の「世耕弘一奨学金」は、入学前に予約できる奨学金で、採用人数は150人と多め。返還不要の年額30万円が、1年間給付されます。
また、貸与型の無利子奨学金もあります。学部生には年額60万円(薬学部医療薬学科は80万円)が貸与され、卒業後から返還が始まります。

(参考)近畿大学独自の奨学金|近畿大学

私立大学は、独自の奨学金を用意しているケースがよく見られます。経済的困難を条件とする奨学金のほかにも、成績優秀者をサポートするための奨学金を用意する大学もあります。
大学の奨学金については、募集要項や入試サイトに掲載されています。こまめにチェックし、自分が対象となる奨学金がないか探してみてください。

まだある!チェックしておきたい奨学金

日本学生支援機構(JASSO)や地方自治体、大学・短期大学のほかにも、奨学金を用意する団体があります。おすすめの奨学金を3つ、紹介します。
まだある!チェックしておきたい奨学金

おすすめ奨学金(1) 公益財団法人日本証券奨学財団

公益財団法人日本証券奨学財団が指定する大学に在学する2年生以上で、大学から推薦を受けられた学生が応募できる奨学金です。指定大学は、以下の通りです。

<指定大学>
北海道、東北、新潟、筑波、お茶の水女子、東京、東京科学、一橋、東京都立、慶應義塾、上智、中央、日本、法政、明治、立教、早稲田、横浜国立、名古屋、名古屋市立、京都、同志社、立命館、大阪、大阪公立、関西、神戸、関西学院、広島、九州
※ 専攻分野の制約はなし

公益財団法人日本証券奨学財団の奨学金は、給付型です。返還義務はありません。
採用されると、月額45,000円(自宅外通学者は55,000円)が給付されます。
採用予定数は60名程度。他の奨学金との併用はできません。
入学後に家庭の経済状況が急変し、学業継続が困難になった場合に備えて、知っておいて損はない奨学金です。

(参考)公益財団法人日本証券奨学財団

おすすめ奨学金(2) 公益財団法人キーエンス財団

公益財団法人キーエンス財団は、これから大学に入学する学生を対象に返還不要の給付型奨学金を用意しています。月額10万円が4年間給付され、返還義務はありません。
4年制大学の全学部に進学する1年生が対象で、募集人数は700名です。「学修にあたって経済的な支援が必要かどうか」が。受給審査基準となります。

日本学生支援機構(JASSO)の給付型とは併用不可、貸与型とは併用可能です。

その他、在学生を対象とした30万円一括給付の奨学金や、卒業予定の4年制が対象の総額50%を代理返還する奨学金制度があります。

(参考)公益財団法人キーエンス財団

おすすめ奨学金(3) 一般財団法人トヨタ女性技術者育成基金

一般財団法人トヨタ女性技術者育成基金の奨学金は、未来を担う女性技術者を支援します。
年間60万円を実質無利息(返還予定利率と同額を基金が負担)で借入でき、卒業後8年間で返還します。
基金を支援する企業に入社した場合は、元金の全額もしくは半額が免除となります。
奨学金とあわせて、女性技術者としてのキャリアを考える「育成プログラム」にも参加できます。

(参考)一般財団法人トヨタ女性技術者育成基金

奨学金を利用する学生の割合

奨学金を利用する学生は、少なくありません。日本学生支援機構の調査では、約半数の大学生が奨学金を利用しているとのこと。
また、奨学金を利用する学生の割合は、年々増加していることも分かっています。

<日本学生支援機構の奨学金を利用した学生の割合>
区分 2018年 2020年 2022年
大学学部(昼間部) 47.5% 49.6% 55.0%
短期大学(昼間部) 55.2% 56.9% 61.5%
(参考)令和4年度学生生活調査結果|独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)

同調査からは、「経済的に勉強を続けることが難しい」と回答する学生の数が、大学昼間部で22.7%に上ることも分かっています。
学生が経済的困難を感じる背景にあるのは、大学の授業料高騰でしょう。一般家庭の収入が伸び悩む一方で、大学の授業料は親世代の頃の1.4倍ほどに上がっており、家計への負担増が指摘されています。

奨学金の申し込み方法

奨学金には、大学進学前に申し込める「予約採用」と、大学進学後に申し込む「在学採用」とがあります。
それぞれの申し込み方法を解説します。

予約採用の申し込み方法

予約採用は、高校を通じて申し込み手続きを進めます。申込書類を提出すると、審査が行われ、採用が決定すると通知が届きます。
その後、大学入学後に「大学に進学した」旨の届出を出すと、正式に奨学生となります。

在学採用の申し込み方法

在学採用の奨学金は、大学を通じての申し込みとなります。奨学金の申込書を提出し、審査を受けてください。採用が決定すると通知が届き、正式な奨学生となります。

奨学金に関して最初にやること

まず、記事も参考にしながら、自分に合う奨学金を見つけましょう。次に、奨学金の募集要項を熟読し、自分と世帯が条件を満たしているかチェックします。

奨学金の申込書類には、世帯の収入を証明する書類等が必要な場合もあります。準備に手間取って申込期限を超過しないよう、早めに準備を始めましょう。

奨学金に関して不明点があれば、高校の進路指導担当の先生に相談してみてください。

貸与型奨学金の返還方法と期間

貸与型の奨学金は、大学卒業後に返還が始まります。日本学生支援機構の奨学金の場合、毎月定額を返還する「定額返還方式」と、前年の所得に応じて返還額が変動する「所得連動返還方式」の2種類の返還方法があります。返還にかかる期間は、どちらの返還方式を選ぶかによって変わります。

なお、返還は口座振替で行います。貸与終了時に学校から配布される「貸与奨学金返還確認票」の内容を確認し、口座振替の手続きを行う必要があります。

第二種奨学金(有利子)の利子は、貸与終了の翌月1日から加算されます。

奨学金に関してよくある疑問7つ

奨学金は受給条件や規則が細かく、「いまいち、よくわからない」となりがちです。ここからは、奨学金に貸してよくある疑問を、Q&Aで解説します。

予約採用は、大学進学前に奨学金の申し込みができる制度です。予約採用の奨学金は、大半が大学入学前に給付・貸与となります。何かと出費が多い入学時に、経済的な不安なく進学準備ができる点がメリットです。
在学採用は、大学進学後に申し込む奨学金です。在学中に家庭の経済状況が急変し、修学継続が困難になった場合に、頼りになります。

採用可否に影響する成績基準は、予約採用のほうが厳しめです。
貸与型の奨学金には、保証人が必要です。
保証人には、連帯保証人と保証人の2種類があります。
種類 役割 なれる人
連帯保証人 奨学生と連帯して返還の責任を負う人 原則的に、奨学生の父母
保証人 奨学生と連帯保証人が返還できなくなったときに、返還する人 原則的に、奨学生のおじ・おば・兄弟姉妹など

また、奨学金を用意する団体が指定する機関から、保証を受けられる制度もあります。日本学生支援機構の奨学金には「機関保証制度」があり、認定保証機関に保証料を支払って、保証してもらいます。

ただし、保証機関に保証料を支払ったから、返還の義務がなくなるという意味ではありません。あくまで、貸与された奨学金は、返還する必要があります。
奨学金は、貸与を受けた本人が返還することが原則です。

親が代わりに返還した場合、年間110万円までは基礎控除の範囲となり、非課税です。ただし、110万円を超えると、贈与税の対象となります。贈与税に関するルールは非常に細かいため、詳しくは税理士にご相談ください。

なお、自治体や企業が、奨学生の奨学金返還を支援する制度もあります。自治体は、「本人が返還して本人に助成」する形式が一般的です。企業が支援する場合は、企業から直接、日本学生支援機構に振り込むこともできます。
親の年収は、奨学金の受給審査に大きく影響します。日本学生支援機構の「進学資金シミュレーター」を利用すると、奨学金受給対象となる年収の目安や受給の可能性がある奨学金種類を、簡単に調べられます。

奨学金は、経済的な理由で修学が困難な学生を支援するためのものです。原則的には、住民税非課税世帯や、それに準じる世帯収入の家庭が対象になると考えておきましょう。

大学や企業が用意する奨学金には、経済的理由ではなく、成績優秀者を支援する目的の奨学金もあります。ぜひ、調べてみてください。
併用可の奨学金と、併用不可の奨学金とがあります。詳しくは、奨学金それぞれの募集要項をご確認ください。

日本学生支援機構の奨学金は、貸与型(第一種・第二種)の併用ができます。併用の採用基準は、併用しない場合と同様です。ただし、併用すると返還すべき総額が増える点には、注意してください。
卒業後、何らかの事情で奨学金を返還が困難になったら、すみやかに貸与した団体に相談してください。「月々の返還額を調整する」「猶予期間を設ける」など、対処法を提案してもらえます。

延滞すると余分な利息がかかり、保証人にも督促が行きます。また、債権回収会社から一括返還の請求が届く、ブラックリストに載るなどの可能性もあります。
大学を中退すると、奨学金の必要性がなくなります。奨学生の資格も消失するため、学校に連絡して、速やかに奨学金を止める手続きをしてください。

なお、退学時までに貸与された奨学金は、返還義務があります。返還のための口座登録手続きをし、返還していきましょう。

大学案内・募集要項はキャリタス進学で入手しよう

大学が用意する奨学金は、大学案内や募集要項にわかりやすく紹介されています。志望大学の奨学金制度を正しく知るために、まずは大学案内や募集要項を手に入れ、熟読しましょう。

キャリタス進学で資料請求できる大学も、数多くあります。まずはキャリタス進学をチェックし、自分に必要な資料を手に入れてみてはいかがでしょうか。 キャリタス進学で資料請求できる大学

まとめ

日本学生支援機構の奨学金が広く利用されていますが、自治体や大学が用意する奨学金、企業や基金が提供する奨学金など、さまざまな種類があります。広く情報を調べ、自分に合った奨学金を見つけてください。

大学が用意する奨学金は、大学の入試サイトや大学案内で解説されています。受験を検討中の大学があれば、大学案内を入手し、奨学金について正しい情報を把握することが第一歩です。キャリタス進学の資料請求で、大学進学に向けて歩み始めていきましょう。

記事提供


執筆者名:塾探しの窓口 編集部
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