受験のプロが語る!新課程入試を翌年に控え、受験生は2024年度の大学入試にどう臨むべきか。

2024年度の大学入試は、新課程で実施される2025年度入試を翌年に控えていることから、例年以上に安全志向が強まることが予想されます。受験生はどんな姿勢で入試に臨むことが大切なのでしょう。駿台予備学校 入試情報室の城田高士部長にお話をうかがいました。

1.2023年度入試の志願者動向を振り返る

大学入学共通テストは前年度から平均点がアップ

駿台予備学校 入試情報室 部長 城田 高士氏

2023年度の入試結果について、まずは大学入学共通テスト(以下、共通テスト)からお話ししましょう。進む少子化の影響もあり、志願者数は5年連続で減少。受験者数もマイナスとなりました。共通テストに変わって2年目の2022年度の平均点は、大きく下がりましたが、2023年度は特に数学がだいぶ易しくなったこともあって、平均点が上がりました。

文系は外国語系と国際関係系で志願者が大幅減

国公立大学の志願者数は2022年度と比較して少し減りました。学部系統別では、文系は経済・経営・商学系統が伸び、法学系統は減っています。最近の受験生にとって法律家や国家公務員は、魅力のある仕事と映らないのかもしれません。

大幅に志願者が減ったのは外国語系統と国際関係系統です。これは、新型コロナウイルス感染症の拡大が大きく影響したと考えられます。コロナ禍が生活を変え始めたのは2020年の春頃から。現役生は高校1年生でしたので、その後の3年間はコロナ一色でした。コロナ前は海外研修を実施する高校もあり、家庭でも家族で海外旅行に出かけることもあったでしょう。しかし現役生はそうした機会がまったくないままに3年間を過ごしました。大学進学後も留学できるかは不透明で、それが志願者減につながったと思います。これらの系統の人気が復活するには、まだ数年かかるかもしれません。

一方で、文理横断的な学びの分野である総合科学系の志願者が少し増えています。一橋大学は2023年度にソーシャル・データサイエンス学部を新設しましたが、同学部のようなデータサイエンス系学部の新設は最近増えており、受験生の注目を集めています。

理系は医学系、薬学系が増加。農・水産系も人気

受験のプロが語る!2024年入試

国公立大理系ではコロナの影響からか、医学系、薬学系の志願者が増加しました。現役生は医療問題を3年間ずっと見続けてきたので、それが志望動機に働いたのでしょう。医学部の定員増の措置が継続していることも大きいと思います。まだまだ高い関門ではありますが、間口が広くなってきたのは事実。駿台が実施した模擬試験でも、医学部志望者の平均偏差値は現役生・浪人生ともに少しずつ下がっています。特に浪人生が下がっており、以前と比べて現役合格できる可能性が高くなっていることが推察できます。医学部に入るには浪人して当たり前という時代は終わりました。

国公立大学の薬学系が増えたのは、将来、製薬会社で製薬や創薬を研究したいという人が増えているからだと思います。農・水産系は食の安全への関心から多くの志願者がいる系統です。

地方の受験生が大都市圏に目を向ける兆し

国公立大学の地域別の志願状況では、北関東と首都圏に受験生が集まりました。コロナが少し落ち着き、地方の受験生が大都市圏の大学に目を向け始めた兆しが出ています。今年1年間、コロナの感染が大きく広がらなければ、受験生も地元進学から他エリアへの進学へと広がる可能性はあるように思います。

併願校の絞り込みと一般選抜の回避で私立大学の志願者は減少続く

私立大学の志願者数は2019年度以降、減り続けています。減少する背景には、受験生が併願校を絞り込んでいること、一般選抜を回避して学校推薦型選抜や総合型選抜などの“年内入試”を受ける受験生が増えていることがあると考えられます。コロナをきっかけに地方から大都市圏に出てくる受験生が減ったことも大きい。私立大学が一番多いのは首都圏や関西圏なので、大都市圏に出る受験生が減れば私立大学の出願校数も減ります。

学部系統ごとの志願者動向ですが、全体的に国公立大学と非常に似た傾向が出ています。文系では経済・経営・商学系統が堅調に受験生を集めている一方、法学系統や国際関係系統などは低調です。理系では、医学部、理学部、農・水産系学部などが増加しました。