改革2年目となる2022年度大学入試、志願者動向とねらい目の学部・学科を読み解く

2 将来を見すえて挑戦したい学部・学科

ねらってみたい外国語系、国際関係系、農水産系

駿台教育研究所進学情報事業部長 石原賢一氏

あくまでコロナ次第ではありますが、仮にコロナ禍が収束して、打撃を受けた飲食、宿泊、運輸、観光などの業種に復活の兆しが見えてくるようなら、これらに関連した学部・学科系統は回復するかもしれません。ただ、このままの感染状況が続くようなら、2022年度入試でも志願者は伸びず、むしろ2021年度以上に減ることも考えられます。

そんな中、外国語系や国際関係系はねらい目だと思います。留学できないなどの理由から志願者を減らしましたが、グローバル社会にあって外国語や国際関係を理解することは絶対に欠かせません。もう一つお勧めしたい分野は、農水産系です。残念ながら近年は人気がないようですが、いずれ食糧危機が顕在化する時代が来ます。世界では植物由来のものから合成肉を作ろうとしていますし、栽培漁業や、工場で作る農業のような仕組みが今後は必要になってくるでしょう。そうしたことからも農水産系は注目に値する分野です。

データサイエンス系の人気は続くでしょう。ただ、本気でコンピュータを勉強するなら理工系で数学をしっかり学んでほしい。コンピュータは誰もが普通に使えるのが当たり前の時代ですから、よほどの技術がなければ社会でも認めてもらえないでしょう。

国公立大学の医学系は、2022年度も人気が高いと思います。地方の経済が壊滅的で、理科系の優秀な層が、地元で職業を探すとなると医学部ということになってくるからです。ただ、私立大学は高額な学費負担のために国公立大学ほどには志願者は増加しないでしょう。

新設校もチャンス。志願者動向に影響しそうな大阪公立大学

改革が進む女子大学ですが、コロナ禍の中でもいかに変わった点を受験生にアピールしないと人気回復は厳しいと思います。2021年度入試でも志願者が増えたのは、6校ぐらい。神戸女子大学は一番増えた女子大学ですが、入試日程を増やしたことが要因です。コロナ前のように改革の中身をいかに広報していくかがポイントになりそうです。

新設大学・学部は、コロナの影響で受験生への発信力が不足しがちな状況が継続していますが、その分、ねらって面白いと思います。また新設校の中には他大学の志願者動向に大きな影響を与えそうなところもあります。例えば大阪市立大学と大阪府立大学が統合されて新設される大阪公立大学です。これまでは一部の学部を除いては府立大学の方が入試難易度は低かったのですが、統合によって全体的に難易度はあがるはずです。看護学部などは定員が旧2大学よりも少なくなってしまいます。いずれにしても、関西エリアでの国公立大学の選択肢が少なくなることが理由です。特に工学系は大変です。工学部は前期と中期で募集を行いますが、旧大阪市立大学工学部の後期募集がなくなるので、関西エリアの工学部志願者の併願パターンは大きく変わるでしょう。

周囲の環境に惑わされず、「自分のやりたいこと」を見つけよう

周囲の環境に惑わされず、「自分のやりたいこと」を見つけよう

今は世の中全体がデータに振り回され過ぎています。こんな不透明な時代だからこそ、皆さんには自分のやりたいことをしっかりと見つけてほしい。偏差値だけの物差しで大学を選ぶのではなく、「ここでならやりたいことをやれる」という大学を探して、そこに行って頑張ることです。自分が行きたい大学、学びたいことが学べそうな大学に入って、技術なりスキルなりを身に付けること。そして、自分が大学の4年間ないし6年間で何ができるようになったかを振り返り、足りなかったと思えばその後にまた勉強すればいいんです。タフな人間であるためには、大学生活の中のいろいろな場面で、嫌なことを経験するのも大切ですから。

景気の先行きに限らず、政治も社会も、何が起きても不思議ではない状況です。皆さんには、周囲の環境に惑わされず、「自分の好きなことをやるために大学に行くんだ」という気持ちを強く持って、大学を選び、受験することが正解だと言いたいですね。

2022年度は2021年度のような入試改革はありません。変更点は少ないですし、どちらかと言えば受験生にプラスに働くような変更をする大学が多い。不安を捨て、過去問の演習などを十分やるなどして対策に取り組んでください。

<取材日:2021年7月27日>

profile

駿台教育研究所 進学情報事業部長 石原賢一氏

石原 賢一(いしはら・けんいち)
駿台教育研究所進学情報事業部長。
駿台予備学校に入職後、学生指導、高校営業、カリキュラム編成を担当後、神戸校校舎長を経て、06より現職。