大学入学共通テストの初年度結果から見える2022年度入試に勝つためのヒント

不透明な2022年度入試、今やるべきことは

2022年度の共通テストは日程さえ未定。個別試験も不確定要素が多い

駿台教育研究所進学情報事業部長 石原賢一氏

2022年度の共通テストは、例年通りなら2022年1月15・16日に行われるのでしょうが、新型コロナウイルスの影響で未定です。(2021年4月16日時点)また2021年度の共通テストでは、受験機会を増やすなどコロナの影響に配慮した措置が取られましたが、2022年度入試でもそうした措置が取られるのかもわかっていません。

個別試験も同様に不確定要素が多くあります。例えば筑波大学は、2021年度の個別試験に「調査書を利用した主体性等評価(調査書の点数化)」を得点化(※配点は学群によって異なる)して合否判定に利用すると発表していましたが、結局は見送りました。しかし2022年度入試でこれを実施するかはまだわかっていません。横浜国立大学は個別試験を止めましたが、2022年度も継続するか不明です。また、名古屋大学の医学部では2021年度は面接試験を行いませんでしたが、2022年度に復活させるかは不明です。

現時点でこれだけ不明点が多い大学入試は初めてです。現高校3年生は、2021年度に受験した高校生以上に不安かもしれませんね。決まっていないことが多く、いつ発表されるかもわかっていないのですから。もし新型コロナウイルスの変異株がもっと広がれば、これまでのような入試ができなくなる可能性さえあります。

難関大学の記述・論述問題志向は当面続く

2021年度入試の実施前、私は難関大学を目指す人と、推薦入試を選択する人との二極化が進むと考えていましたが、思っていたような傾向が出ました。受験スタイルの二極化は、今後2030年代に向けて加速していくでしょう。

中高一貫の進学校や公立の上位校の受験生は、これまで通り難関大学を目指すと思います。東京大学や京都大学などの旧帝大や難関私立大学の個別試験の傾向は大きく変わることはないと思います。これらの大学は、あくまでアカデミズムとしての大学にこだわっていますから。東京大学の二次試験や慶應義塾大学、早稲田大学の政治経済学部や国際教養学部、上智大学、青山学院大学の経済学部で導入した記述・論述力を重視した個別試験は、難関大学では間違いなく増えます。

中堅クラスの私立大学では面接や小論文入試がさらに増える

中堅クラスやそれに続く“ボリュームゾーン”と言われる大学の個別入試は、共通テストを機にどんどん変わっていくでしょう。面接や志望理由書など、主体性を評価した入試が増えていくとは思っていましたが、コロナの影響でオンラインによる面接試験を実施するなど、私の想像よりも早く来た感じです。面接や小論文などから、教育方針や教育制度に合っている受験生を受け入れる大学は増えていきます。

また、今回の共通テストでは初めて「スタナイン(Stanine)」という新しい成績表示法が導入されました。スタナインは、従来の1点刻みの素点(各教科の本来の点数)とは異なり、受験生全体の中でのおおまかな位置を9段階の相対評価で示すもので、各科目の段階評価を大学に提供しているのですが、合否判定に利用した大学はありませんでした。しかし、将来はボリュームゾーンの大学では利用するのが主流になっていくとみています。

共通テスト対策は、新しいタイプの問題に慣れること

共通テスト対策は、新しいタイプの問題に慣れること

2022年度入試で共通テストを受けようと考えている人、特にボリュームゾーンの大学を目標にしている人に言いたいのは、これまでのセンター試験の過去問題でパターン学習するやり方は、まったく役に立たないということ。常に新しい問題に当たっていくことが、一番の対策になります。いろいろな出版社から2022年度入試用の新しい問題集が出てくるでしょう。模擬試験で新作問題に慣れることも勉強法の1つです。駿台の模試はオンラインでも行うので、遠距離や会場が近くにないエリアの人でも受けられます。

知識を増やしていく必要はありません。共通テストの問題は、答えが問題文の中に用意されているのですから。大切なのは、読むべき大事なところ、読み飛ばしても構わないところを的確に判断する力、そして、自分で考えて答えを導き出す力を養うことです。

出た大学ではなく「何ができるか」が問われる時代が来る

人生100年の時代です。何がなんでも現役合格にこだわるのではなく、本当にやりたいことができると思う大学なら浪人して挑戦しても良いし、1年通ってみて面白くないなと思えば辞めて、別の大学に進むのも構わないでしょう。

競泳の池江璃花子さんや萩野公介さんのように、病気や体調を壊したために競技に出られなくなっていたアスリートが復活して話題ですね。彼らは決してあきらめずに自分のやりたいことに挑戦し続けた。それが、素晴らしい結果を生んだのです。

日本の雇用形態はおそらく欧米のような「ジョブ型雇用」に変わっていくでしょう。ジョブ型雇用とは、仕事のスキルを重視した採用方式で、日本でも大手企業を中心に導入する企業が増えています。ジョブ型雇用が浸透していけば、「どの大学を出たか」よりも「大学でどんなことに取り組み、何ができるか」ということの方が重視される時代が来ます。好きなことをやり続けることが、自分を高めるのです。

学部・学科選びは「好きなこと」「興味のあること」を基準に

学部・学科選びは「好きなこと」「興味のあること」を基準に

コロナの影響で、この先どんな学部・学科が有望なのかは、正直なところわかりません。「将来のことを考えて進学先を選びなさい」と言う人がいますが、それは無理な話です。今の大人の中に、高校生の頃に考えていた通りの職業に就いている人がどれだけいるでしょう。ほとんどいないと私は思います。偏差値や知名度で選ぶのも、良い方法ではありません。

皆さんには、「将来に期待が持てる」学部・学科を探すのではなく、「好きなこと」「興味のあること」を基準に考えてほしい。入試のレベルも、決して無理に背伸びすることはありません。「自分に合った大学」でしっかり学ぶことです。4年間ないしは6年間、ここなら勉強できそうと思える大学、雰囲気が合うなと思った大学に進んでください。コロナ禍のため対面形式で実施するオープンキャンパスは多くはないと思いますが、オンラインで実施している大学もありますし、個別相談にも対応しています。ぜひ利用してみてください。

<取材日:2021年4月9日>

profile

駿台教育研究所 進学情報事業部長 石原賢一氏

石原 賢一(いしはら・けんいち)
駿台教育研究所進学情報事業部長。
駿台予備学校に入職後、学生指導、高校営業、カリキュラム編成を担当後、神戸校校舎長を経て、06より現職。