保護者必見!受験のプロにお聞きしました。大学の特色をどう見極め、保護者は受験生をどう支えていくべきか

2020年の入試改革が間近に迫り、大学では生き残りをかけて特色ある大学づくりに取り組んでいます。
保護者の皆さんは、魅力ある大学をどう見極め、受験生であるお子さんをサポートしていけばいいのでしょう。
駿台教育研究所 石原部長にお聞きしました。

岐路に立つ大学

大学経営は受難の時代。特色あるカリキュラムがカギ

駿台教育研究所進学情報事業部長 石原賢一氏

私立大学の方に話を聞くと、入学定員の厳格化によって入学者のレベルがあがった、偏差値で2〜3ぐらい高い人たちが来ているといいます。私は、こうした学生に満足を与えられない大学は今後、厳しい環境に置かれるだろうとみています。今の時代は、はっきり見える学びや卒業までの仕組みをつくらなければなりません。特に中堅クラス以下の私立大学は、よほどユニークな教育を考えていかないと、埋没する危険性があるでしょう。国立大学にしても、2021年以降は安閑としてはいられません。2020年代は法人統合の嵐になるでしょうから。

そうなると、たくさん大学が減ります。だから今、780ある大学のうち、一部の最難関校を別にしたら、特色を出していかないと大学経営は厳しくなる。本気になってカリキュラムや卒業後のサポートに取り組まないと生き残れません。もしかすると、大学の数は半分になるかもしれない。銀行だって大手といわれる都市銀行は最大で15もあったのが、今は5つ(※)。ほかの産業界でもそうです。大学も例外ではありません。

※現在は三菱UFJ、みずほ、三井住友、りそな、埼玉りそなの5行 (埼玉りそなは含めない場合もある)。

系列化と独自路線で二極化する大学

おそらく私立大学は、系列化が進むと思います。また、高等学校や小・中学校との連携を強めている。青山学院大学は今度、埼玉の浦和ルーテル学院を系列化します。大規模大学に系列化されると、保護者に対して大きな魅力になる。今後大学は、系列に入る選択肢と独立独歩でやっていくという選択肢で判断に迷いが出てくると思います。文部科学省も、経営が厳しい大学には厳しい態度で対応するようになるでしょう。

保護者は受験生をどうサポートすべきか

「居心地のいい大学」を見つけよう

そうした変革期にあって、受験生は偏差値という物差し以外にどういう視点で大学・学部を検討していけばいいのか。それは、「今、自分が何をやりたいのか」「自分がその大学で何を身につけたいのか」を重視すべきで、突き詰めれば、「自分にとって居心地がいい大学かどうか」という視点になります。居心地がいい大学とは「自分に合っている大学」であり、入学後も頑張りがきくはずです。ですから、オープンキャンパスに出かけたり先輩の話を聞いたりして、自分に合っている大学かどうか考えてみてください。時間に余裕がある人には、平日に大学を訪ねることをお勧めします。お昼休み時間などに学食へ行って、食事をしている学生の会話を聞いてみる。どんな大学か、わかりますよ。

自分の考えを押しつけず、お子さんから話を聞いてくる雰囲気づくりを

保護者の皆さんには、あまりご自分の考えを押しつけないでいただきたい。楽な道や苦労をさせない方向に導くのは、たいていの場合、失敗します。少し俯瞰的に見てあげて、さすがにそれは違うでしょうというときにだけ、アドバイスしてあげたらいい。難しいことかもしれませんが、できたらお子さんのほうから保護者に聞いてもらえるような雰囲気に持ってくるのがいいでしょう。

人生100年の時代。今の子どもたちの多くは、22世紀まで生きるでしょう。それを考えたら、少々は遠回りしてもいいと思います。最短経路で楽していこうというのが、今の日本全体の良くないところ。ちょっと遠回りするというのも悪くありません。保護者の皆さんにしても、子どものときから思った通りに人生を歩んできた人は少ないでしょう。

失敗を恐れず、果敢にチャレンジする気持ちをサポートしてほしい

2019年度入試、受験生の動向

企業が求めているのも、「失敗した人」です。打たれ強い人が欲しいのです。今は社会全体に余裕がなく、軋轢やストレスを感じる場面が多くなっています。そういう状況に強い心で立ち向かうためにも、若いうちにいろいろと失敗をすることです。大学入試もそうです。一浪をしなさいとはいいませんが、5つ大学を受けたら5つとも合格しなきゃだめとは考えずに、8校を受けたら1つ通ればいいし、その一つがたまたま第一志望だったらいいなという、その程度の考え方のほうがいいと思います。本人が自分の意思で第一志望を決め、果敢にチャレンジできるようにサポートしてもらいたいと思います。

<取材日:2018年8月1日>

profile

駿台教育研究所 進学情報事業部長 石原賢一氏

石原 賢一(いしはら・けんいち)
駿台教育研究所進学情報事業部長。
駿台予備学校に入職後、学生指導、高校営業、カリキュラム編成を担当後、神戸校校舎長を経て、06より現職。