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2025/10/22

賃貸・集合住宅の居住者は循環器疾患死亡のリスクが高いことを明らかに

東京科学大学環境・社会理工学院建築学系の海塩渉助教と、大学院医歯学総合研究科歯科公衆衛生学分野の木内桜助教、未来社会創成研究院 ウェルビーイング創成センターの相田潤教授は、浜松医科大学の尾島俊之教授、日本福祉大学の斉藤雅茂教授、千葉大学の花里真道准教授らとともに、賃貸・集合住宅の居住者は、持家・集合住宅の居住者と比較して、循環器疾患による死亡リスクが高いことを明らかにした。
近年、住環境による健康影響に注目が集まっており、その中でも循環器疾患(脳血管疾患や心疾患)は寒い住宅で発生しやすいことが示され、寒冷曝露に伴う血圧上昇が一因とされている。2018年に世界保健機関(WHO)が発行した住宅と健康ガイドラインでは、冬の室温を18℃以上に保つことや、住宅の断熱化を施すことにより循環器系(脳・心臓)の健康を改善できると示しているが、先行研究では住宅が循環器疾患の発症や死亡に及ぼす影響までを検証した事例はわずかであった。
今回の研究では、38,731人分の6年間の大規模な追跡調査データと厚生労働省の死因データを突合。住宅種別を4種類(持家・戸建住宅/持家・集合住宅/賃貸・戸建住宅/賃貸・集合住宅)に分類して循環器疾患による死亡を比較した結果、所得等を調整した上でも、持家・集合住宅と比べて賃貸・集合住宅の居住者の死亡リスクが高いことが明らかになった。また、住宅種別による死亡リスクの差は、女性より男性で顕著となった。
賃貸・集合住宅居住者の死亡リスクが高い一因には、持家と比較して賃貸の住宅性能(断熱性能等)が低いことが挙げられる。この改善のためには、賃貸住宅オーナーによる住宅性能向上のための投資を促す仕組みづくりが重要と考えられる。また、住宅の環境測定を大規模に実施し、健康データとの突合を行うことで、疾病を予防、健康長寿を実現する客観的な住宅環境基準の確立に繋がることが期待される。