2017年に刊行され、高校生を中心に多くの読者から支持された『大学の学科図鑑』。その改訂版が2021年3月に出版されました。著者の石渡さんは大学ジャーナリストとして19年のキャリアをもち、豊富な取材と情報から発信する書籍や記事には定評があります。石渡さんに、コロナ禍で改訂版の執筆に取り組んだ思い、学部・学科選びで押さえておきたい考え方のポイントをうかがいました。
『大学の学科図鑑』を書こうと思った動機を教えてください。
大学の学科数が年を追うごとに増えているという状況が背景にありました。文部科学省の「学校基本調査」2020年度版を元に数えてみると、学科数は3479。2017年に刊行した『大学の学科図鑑』の執筆時点(2016年)での学科数は2976ですから、改訂までの期間だけで約500学科も増えています。おそらく高校の先生も保護者も、学科名をすべて言える人はいないでしょう。私も関連資料をそろえて常に勉強していますが、それでも把握しきれてはいません。ならば、主立った学科や特徴のある学科を選択して紹介することに、大学ジャーナリストとして私が取り組む意義があるのではないかと思いました。
改訂版の執筆でこだわったことは何ですか。
新型コロナウイルスの影響で社会情勢も就職環境も大きく変わったことから、可能な限り加筆・修正しました。本文をすべて差し替えたところもあります。特に各章末に掲載するコラムのテーマは大きく見直しました。それぞれの章に合ったテーマもありますが、大学進学にあたって必要な情報をもっと発信していくべきだと考え、大学進学について考える際のヒントになるようなテーマも増やしました。
ここで言う「情報」とは、私が大学ジャーナリストとして19年間集めてきた資料や、大学に足を運んで得た生きた情報です。私がこれまで訪問した校数は、450校以上になります。取材で行くことはもちろん、オープンキャンパスに参加したり、講演に呼ばれたりしたこともあります。ふらっと訪ねたこともあります。また、日ごろから全国紙にすべて目を通し、大学関連の情報があれば逐次チェックし保存しています。こうした活動を通じて得た情報の中から、紹介に値する取り組みや面白いと思った情報を選んで盛り込みました。
どうして大学に興味をもつようになったのですか。
大学生の意識に格差があることに、強く興味を抱いたからです。かつて私が日用雑貨の実演販売を仕事にしていたころ、友人に誘われて出かけたある新設校の大学祭での出来事がきっかけとなりました。
大学祭ではゼミの研究室を公開していて、友人と研究室に入ると、一人の学生が自分の研究内容を一生懸命に説明してくれました。その時ふと目を片隅にやると、暗い表情をした学生が3人ほどいたんです。気になって「何でこの大学に入ったの?」と聞くと、「志望校に落ちたので仕方なく入った」と言うんです。
一生懸命に説明した学生も暗い顔の学生も3年生で、就職活動を目前に控えていました。どちらの学生の就活がうまくいったかは知りませんが、答えはわかる気がしました。この光景に接したとき、なぜ同じ大学に通う学生なのに気持ちに格差があるのかが気になり、格差の実態や背景を調べて本にまとめたいと思うようになりました。