


大学への入学ルートはさまざまですが、一般的な高校生が入学するルートは、(1)一般入試、(2)推薦入試、(3)AO入試の3つ。このうち、すべての大学で実施され、最も志願者が多いのが一般入試です。
保護者の多くも受験した経験があると思いますが、一般入試は学力試験で合否が判定される入学試験といえるでしょう。中には面接や実技などを課す大学・学部もありますが、ほとんどは学力試験の結果が合格点に達していれば合格を手に入れることができます。つまり、現在の学力が多少低くても「これからの努力しだいで志望する大学へ入学することができる」わけです。このことを子供にしっかりと自覚させて、受験準備を進めることが大切です。
この一般入試は、国公立大学と私立大学で入試システムが異なるので、まずは、その違いを理解しておく必要があります。
●国公立大学の入試システム
国公立大学の一般入試は、センター試験入試と各大学の学部・学科が実施する個別試験(二次試験)の結果によって合否判定がされます。二次試験の出願は1月下旬からですが、センター試験の点数が基準点に到達していないと受験できない「2段階選抜」を取り入れている大学も数多くあります。自己採点の結果や公表された平均点を踏まえて、志望校や併願校を決める必要があるといえるでしょう。
入試教科・科目は各大学で異なりますが、センター試験は多くの大学で5教科7科目が課されています。
2015年度の入試では、数学・理科の2教科で、新しい「高等学校学習指導要領」に対応した出題範囲へ変更されました。2016年度からは、その他の教科も、新課程の科目による出題となります。しかし大きく変わるのは英語、国語の2教科で、その他についてはほぼ従来通りです。
また、2016年度からは「工業数理基礎」が廃止されますが、旧課程履修者のために2016年度のみ出題科目とされます。新課程生は選択できないので注意しましょう。
2次試験は「分離分割方式」という方式が採用され、国立大学の場合、前期日程と後期日程の2回実施、公立大学では、前期・後期のほかに中期日程があります。
しかし、国立大学では後期日程を廃止して前期日程に一本化する動きが出ているため、中期・後期日程は予備的なものと考えて、前期日程に的を絞って受験準備を進めることが賢明です。
2016年度の国公立大学の入試スケジュールを表1にまとめましたので参照してください。


●私立大学の入試システム
私立大学の一般入試は、多くの大学で選抜方法が異なる「複線入試(アラカルト入試)」を導入しているのが特色です。主流となる試験のほかに、少科目試験・得意科目重視型試験・地方試験・後期試験などが実施されます。中には保護者の知らない選抜方式もあると思われますので、表2に選抜方式の種類と活用法などをまとめておきます。
特に、センター試験を利用した「センター試験利用入試」の導入校が年々増加しており、15年度は523大学・144短大を数えています。このような複線入試を利用すれば、同じ学部・学科に複数回受験することができます。
私立大学の受験スケジュールは1月中旬から出願が始まり、1月下旬から2月下旬まで試験日が集中し、3月からは後期試験がスタートするというのが一般的。しかし、入試科目や選抜方法を含めて入試日程も各大学で異なるので、志望校については早めに入試情報を入手することが大切です。

センター試験利用入試 |
私立大学がセンター試験の成績を合否判定に利用する選抜方法。個別試験を課すケースもありますが、多くの大学ではセンター試験のみで合否を判定。3教科受験が中心で、センター試験を受験しておくだけで複数の大学を併願できます。 |
得意科目重視型試験 |
受験生の得意科目を配点面で重視する選抜システム。3科目受験して得点の高い2科目のみを採点する(ベスト2方式)、事前に申告した得意科目の配点を高くするなど選抜方法はさまざま。自信を持つ得意科目があると有利です。 |
地方試験 |
大学がその所在地で行う「本学試験」に対して、それ以外の地域に試験場を設けて行う試験のこと。遠隔地にある大学を自分の地元で受験できることが最大のメリット。経済的にも、体力・精神的にも負担が軽減できます。 |
後期試験(3月試験) |
2回以上学生を募集する入試システムを「期別募集」と呼びますが、1回目の募集の後に行われる2回目以降の募集のことをいいます。3月中心に行われることが多くなっています。受験機会の拡大がメリットで、2月の試験に失敗した場合のラストチャンスにもなります。 |
試験日自由選択制 |
同じ学部・学科で複数の試験日を設定して、その中から受験生が自由に試験日を選べるシステム。試験問題は日によって異なります。多くの大学では、用意された試験日全部を併願することができ、同一学部・学科の受験チャンスが拡大します。 |

●日常の成績や活動を評価する「推薦入試」
一般入試と並ぶもう1つの入学ルートとして「推薦入試」と「AO入試」があります。
推薦入試は、出身学校長の推薦によって受験する入試システムのこと。この推薦入試は、ほとんどの私立大学と9割近い国公立大学で実施されています。また、推薦入試といってもさまざまな種類がありますが、ここでは公募制推薦を解説しましょう。そのほかの推薦入試については表3を参照ください。
公募制推薦は、大学が定める出願条件を満たしていれば、誰もが出願できる入試システムです。出願条件は「卒業年次」と「学業成績」を提示するケースが多く、例えば「現役のみ受験可で、全体の評定平均値が3.5以上」などと示されます。このほか、課外活動の実績、取得資格、学習意欲などを条件としている大学もあります。推薦入試の試験日のピークは11月中旬で、多くの大学では年内には推薦入試の合否が判明します。「入学試験要項」は2学期の初めにはほとんどの大学で用意されています。志望校が決まったら、早めに入学試験要項を入手して、調査書と推薦書の作成を先生にお願いするとよいでしょう。
推薦入試で重視されるのが高校での日頃の学習姿勢や活動状況。そのため、選考では「調査書による書類審査」を重視。この書類審査に加えて、面接・小論文・基礎学力テストなどを課す大学も数多くみられます。いずれにしても、出願条件・入試スケジュール・選考方法は各大学で異なるので、しっかりと確認しておくことが大切です。

指定校推薦 |
大学が指定した高校に対して、校内選考において高い学業成績を修めた生徒を推薦してもらう制度です。在籍している高校がどの大学の指定校となっているか、確認しておきましょう。国公立大学では実施されていません。 |
スポーツ推薦 |
スポーツ実績優秀者を対象とした推薦入試。一般に、全国レベルの大会で上位に入賞したなどというハイレベルなスポーツ実績が要求されます。対象となる競技種目が各大学で限定されているので注意を要します。 |
有資格者推薦 |
英語検定・情報処理技術者試験・簿記検定などさまざまな資格取得者を対象とした推薦入試。資格の種類・級などは各大学で異なります。資格ではありませんが、TOEICやTOEFLの高スコア得点者を対象に含める大学も多くなっています。 |
自己推薦 |
出身学校長の推薦を必要とせず、受験生が自分自身をアピールして応募できる推薦入試。特技、課外活動実績、取得資格、スポーツ実績などアピールポイントは限定されず、さまざまな能力・資質・経験が評価対象となります。 |
●目的意識や学習意欲を重視する「AO入試」
AO入試とは、アドミッション・オフィス(入試事務局)の専門スタッフが行うアメリカ式の入試システムをアレンジしたもの。2000年度入試あたりから導入校が増え、国公立大学71校(15年度)私立大学469校(14年度)で実施されています。
このAO入試では、学力よりも目的意識や熱意・意欲が重視され、志望学部・学科の教育内容やアドミッションポリシー(受け入れ方針)をよく理解して出願することが大切です。目的意識や学習意欲を重視しているので、推薦入試のような出身学校長の推薦の必要はなく、出願条件も厳しくないのが一般的です。
選考方法は表4に図解した「対話重視型」「書類・論文重視型」の2つのタイプが主流ですが、これは大まかなもので出願や試験当日までにやっておかなければならないこと、提出しなければならないものは大学によって千差万別。数多くの手順を要するケースもあります。志望校の試験までのプロセスをしっかりと理解しておかなければいけません。入試スケジュールも大学によって大きく異なりますが、エントリーを行う大学では、エントリー期間が通常の入試より早めに設定されているのが一般的。早めに志望校の要項を入手して、入試スケジュールを確認しておく必要があります。
AO入試の対策では、目的意識や学習意欲を示すことが大切。「なぜ入学したいのか」「入学したら何を学び、どんな研究をしたいのか」などの志望動機をよく考えて、それを面接などでアピールすることがポイントです。

【タイプ1ー対話重視型】

AO入試説明会やオープンキャンパスなどに参加してAO登録(エントリー)を行い、1〜2回の予備面接で受験生と大学の双方が合意した上で、正式にその大学に出願し、書類審査・面接・小論文などによって選抜します。エントリーの際は、志望理由や自己アピールを大学指定の「エントリーシート」に記入して提出することが多くなっています。
【タイプ2ー書類・論文重視型】

出願時の書類などをもとに1次審査を行い、その合格者に対して面接など2次試験を実施して合否を判定します。出願時の書類は、調査書だけでなく、志望理由書や研究計画書・事前レポートなどの提出を求められるケースもあります。2次試験では面接だけでなく、小論文やグループディスカッション、プレゼンテーションなど独自の試験が行われるケースも増えています。 |