君たちはどんな未来地図を描けるのか
日本はこれから少子化による深刻な人口減少が予測されています。2040年までを見ても65歳以上の高齢者人口は増えていきますが、15歳未満の数は減り続け、15歳以上、65歳未満の数は減少の一途をたどります。このことが社会的に何を意味するのかを考えてみましょう。
まず日本企業は雇用する日本人の絶対数が不足するという問題に直面します。さらに市場規模の面から考えると、人口減少によって日本のマーケットが縮小していくという現実も企業にとっては深刻です。転じてグローバルな観点で見ると世界中の国が人口減少の問題を抱えているのではなく、新興国は逆に爆発的な人口増加とともに経済成長が見込まれています。つまり、日本の企業にとって、拡大する海外マーケットこそが今後の生命線となるかもしれません。
日本には、その地理的条件と江戸幕府が行なった215年間に及ぶ鎖国政策によって、一部の国を除き世界との交流が絶たれていたという歴史的背景があります。しかし明治時代に入ってからの急速に展開した世界との交流を考えると、日本人の気質にグローバルな要素が欠けているとは思えません。
自由に人々が往来し、ICT(Information communication technology)によって情報が瞬時に全世界を飛び交う今に生きる君たちが描く未来地図は、世界を舞台に、あらゆる多様性を受け入れ、世界中の人々とのコミュニケーションによってより色鮮やかに彩られるべきです。
官民上げてのサポート体制を活用しよう
高校生の君たちにとって、周囲の皆と違う道をたどることへの抵抗は大きいかもしれません。大学や各種専門学校への進学、あるいは実社会に踏み出す選択をする人たちが大多数というなかで、高校在学中に長期間、海外で勉強することに不安を感じるのは当然のことです。現状の数字を追って見ても、2011年の高校生の海外留学者は2004年と比較して約30%の減少、研修旅行者数は約15%減少しています。
さらに文部科学省が実施した高校生の海外留学の阻害要因は、言葉の壁(56%)、経済的問題(37.9%)、留学方法、外国での生活、勉強、友人関係の不安(33.6%)と続いています。逆に、留学したらやりたいことを尋ねると、語学力を向上させたい(61.2%)、外国の人と友達になりたい(54.7%)、外国の文化、歴史、自然等にふれたい(51.3%)という阻害要因と裏返しの結果が出ました。
高校生が海外留学に踏み出せないのは、特に経済的な要因と、心理的要因の二つに分けられるといってよいでしょう。それぞれに対策を考える必要がありますが、まず社会的に高校生の留学を促進する施策として、次のような動きがあります。
また、留学フェアを開催し、安心・安全な留学への関心を深め、モチベーションを高めるとともに、帰国後の進路を見据えた大学フォーラム、キャリアフォーラムを開催しています。文部科学省は2020年を目標に海外留学生の数を倍増する計画を立てていて、高校生の場合は3万人から倍の6万人に増やすべく官民協力のもとで様々な仕組みを創設しています。まさに、高校生の「留学したらやりたいこと」の方に気持ちの羅針盤がおおきく振れるべく官民挙げてのサポートが動き出しています。
もちろん、初めて家族のもとを離れて言葉の壁のある海外へ行くことへの不安、長期間、友達と会えないことの寂しさは大きいと思います。でも、考えてみてください。いつもと同じ景色ばかりを見ていては、発想力、創造力が限定されてしまい、それはとても残念なことではありませんか?未知のヒト、モノに出会うことは、無限の可能性を手に入れるチャンスです。本当の友達なら離れていても友達であり続けるはずだし、何よりも、世界に飛び出さなければ出会うことのなかった友達ができるという喜びを想像してみてください。
語学習得にも適した瑞々しい感性を持っている今だからこそ、世界が多様性に満ち溢れていることを実感するべきです。ICTによって世界がつながっているこの時代、まさに人間同士のコミュニケーションが重要な役割を果たしていることを体感してください。
君たちが社会に出ていく頃には、海外の優れた人材を活用することで企業が生き残っていく時代になっていることは間違いありません。また、海外の拠点で現地のスタッフの能力を最大限に活かすことが会社の唯一残された道になっているかもしれません。いずれにしても、企業内のダイバーシティは既に間違いなく進んでいきます。そういった社会の中で価値のある人になって欲しい、そうした強い人間力は海外で様々な体験や交流を体験してこそ得られるものだと思います。